空地

所有者不明土地

初当選したころ、地元のとある方が、先祖代々ため池を維持管理しているけど高齢のため行政に移管しようとしたら登記上の所有者が4代前なので移転登記にハンコが100個くらいいる、ということになり、なんとかならんのか、というご相談を頂いたことがありました。

所有者は不明ではないのですが、土地の有効利用が阻害されている現状の好例です。しかし移転登記が義務化されていない日本では、放置され、最悪、所有者不明となっている土地はかなりあるといわれています。

土地とは、所有する個人の安心の担保であるとともに、需給バランスに伴う価値の変動で、関心の変化がおきるものです。つまり、人口増加のとき(もしくは地価上昇)は、争って権利確定したいと思うし、人口減少の時は、放置しとこうと思うものです。

しかし権利確定したい人が増えれば争いも増えるのは当然です。そこに国家が権限行使すれば憲法違反だという反論がでる。しかし無理して大反論にあいながら国家が交通整理をしなくても、そもそも有効利用したい人が多いはずなので、社会構造としては問題は少ない。

一方で、人口減少時代の土地の放置は、所有者もしくは管理者の土地への無関心を助長し、前述のように特にそれが所有者不明の土地にでもなれば、虫食い的散発的に利用できない土地が増え、新しい価値を生もうともがいている人たちの参入を阻む大きな阻害になることは必定です。

従って、人口減少時代には移転登記を義務化することが望ましいと考えます。しかも土地の価格が上昇しつつある現在、それほど悠長にことを構えていたのでは、実現困難になることが簡単に想像でいます。

そもそも憲法は何と言っているかというと、第12条で、「この憲法が国民の保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。」とあります。

不断の努力は当然としても、それが何を意味するのかを国民全員が考えていかなければならないのだと思います。(そもそも義務化などしなくても、この趣旨に沿えば、全員が適切な移転登記を済ませているはずだからです)。

現在、所有者不明土地は、410万ヘクタール。北海道本島の6割に相当し、2040年には720万ヘクタール、おおよそ北海道本島の面積に相当します。その経済損失は、2040年までの累積推定で6兆円という試算があります。

今日、自民党政調の所有者不明土地等に関する特命委員会が開催され、方向性が見えてきました。ただ義務化については、決定されているわけでも方向性が示されている訳でもありません。

しかし、今年度末までには、土地所有に関する基本制度の見直し(国交)・登記制度と土地所有権の在り方に関する検討(法務)・土地所有者情報把握の仕組み検討(各省)など、本質的な土地制度に関する検討が行われる方向ですので、引き続き注視して参りたいと思います。

今通常国会には、具体的な課題への対処としての法律改正が行われる予定です。国交からは所有者不明土地の収用の合理化など、法務からは法定相続人リスト整備や登記を促す仕組み、他人に害悪を及ぼすような土地の管理など、長期間相続登記していない土地を解消する仕組みを徐々に乗り出す方向ですし、農水や林野からは、既存制度の拡充・要件緩和などを進めることなります。

出典:大野敬太郎オフィシャルサイト「オピニオン」【2018年1月30日公開】

大野敬太郎

大野敬太郎

衆議院議員

1968年11月1日生まれ。
坂出中央小・付属坂出中・丸亀高校・東京工大卒・同大院修士。
東京大学博士号取得。富士通研究所・カリフォルニア大バークレー校客員フェロー・国務大臣秘書官・東大産官学連携研究員・国会議員秘書などを経て、第46回総選挙で初当選。

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