大阪都構想

4区と6区の区割り原案浮上、どうなる再挑戦の大阪都構想

2015年の住民投票で否決された大阪都構想の議論が再び、法定協議会で始まりました。

大阪市を廃止して現在の24行政区を4、6の特別区に再編する2通りの区割り原案が浮上していますが、大阪府議会、大阪市議会で野党第1党の自民党は都構想に強く反対し、市民の関心もまだ盛り上がっていません。大阪維新の会が目指す2018年秋の住民投票は実現するのでしょうか。

4区案は各区の人口50~80万人規模

区割り原案は市がまとめました。住民投票で市を5つの特別区に再編する都構想が否決されたことから、議論のたたき台となる区割りを4区案と6区案にしています。

梅田や難波、阿倍野といった繁華街を分割せず、税収の多い北、福島、中央、西、天王寺などの各区をできるだけ分散、人口と税収格差を最小限に抑えるよう配慮しました。このうち、4区案は隣接する行政区を5~7ずつ集め、1区当たりの人口を50~80万人規模にしています。区割りは

  • ■1区=北、都島、東淀川、東成、鶴見、旭、城東
  • ■2区=福島、此花、港、西淀川、淀川
  • ■3区=中央、浪速、西、大正、住之江、住吉、西成
  • ■4区=天王寺、阿倍野、生野、東住吉、平野

2015年国勢調査の人口を当てはめると、最も多いのが1区の85万2,000人で、2区が49万3,000人で最も少なくなっています。2035年の推計人口でみると、44~79万人となり、人口格差を1.8倍にとどめました。区民1人当たりの自主財源の格差は最大の区と最少の区で1.1倍です。

6区案は30~60万人規模の特別区に再編

6区案は3~5の行政区を集約し、30~60万人規模の特別区に再編しました。区割りは

  • ■1区=北、都島、東淀川、旭
  • ■2区=福島、西淀川、淀川
  • ■3区=東成、城東、鶴見
  • ■4区=此花、西、港、大正、
  • ■5区=中央、浪速、住之江、西成、住吉
  • ■6区=天王寺、阿倍野、生野、東住吉、平野

2015年の国勢調査人口だと6区の63万6,000人が最多、4区の30万6,000人が最少となりました。2035年推計人口では28~55万人で、人口格差は2.0倍。税収格差も1.2倍にし、前回の5区案の1.4倍より低く抑えています。

大阪湾に面した西淀川、此花、港、大正、住之江の5区は、南海トラフ巨大地震で津波被害が予想されることから、3区に分散して行政が機能不全に陥らないよう配慮しました。今後、この区割り原案に24行政区の意見を反映したうえ、府と特別区の事務分担も明記して夏の間に素案を作成、法定協での審議のたたき台にする方向です。

法定協議会は初日から維新と自民党が全面対決

法定協の審議は6月からスタートしています。初会合では会長に維新の今井豊前府議会議長を選ぶとともに、区割り案と財政シミュレーションを盛り込んだ素案を作ることを決めました。

しかし、素案作りを「スケジュールありきの審議」として自民党が反発、採決の末、公明党が賛成に回ってどうにか作成が決まりました。初日から維新と自民党が正面からぶつかったわけです。

法定協は松井一郎大阪府知事、吉村洋文大阪市長と府議会、市議会議員各9人の計20人で構成されます。会派別内訳は維新が松井知事、吉村市長を含めて計10人。残りは自民党5人、公明党4人、共産党1人。

都構想を推進する維新に対し、自民党と共産党は反対です。公明党は市の権限を区へ大幅に委譲する総合区導入を主張しています。法定協で総合区についても議論することになったため、法定協設置で維新と足並みをそろえましたが、都構想反対の立場を崩していません。維新は単独で法定協の過半数に届かないことから、公明党を抱き込まなければ前へ進まないのが現実です。協定書がまとまらなかったり、住民投票で否決されたりした場合、総合区導入へ舵を切る方針とみられていますが、審議の成り行きは予断を許しません。

大阪の再生に向け、前向きな議論が必要

都構想に対し、市民の関心は前回ほど盛り上がっていません。前回の住民投票で決着がついたと受け止める市民が少なくないからでしょう。人気者で都構想のシンボル的な存在だった橋下徹前大阪市長がいないことも影響しているとみられています。

維新の目標通り2018年秋に住民投票を実現するには、その年の夏までに協定書をまとめなければなりませんが、仮に公明党の協力を得て住民投票が実現しても、結果を楽観できる状況ではありません。

維新としては1度否決された民意を覆そうとしているわけですから、説得力のある提案を打ち出し、十分な説明で市民の理解を得る必要があります。前回の焼き直しと見える提案で市民の理解を得るのは難しいでしょう。反対する自民党も不毛の対立を繰り返すだけでは、市民の共感を集めるのが難しくなります。大阪市は関西全体が人口減少に陥る中、若者の都心回帰で人口増加が続いていますが、経済の地盤沈下が長く続いています。大阪の再生に何が必要なのか、法定協ではこうした視点から前向きな議論を進めることも求められています。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。