日本の福祉に希望の光を

本来国が出すべき障がい者の自立に関する予算が、地方に丸投げされているため、日本の福祉にも地域格差が生まれています。ピアカウンセラー養成講座や自立生活体験室、重度訪問介護従業者養成研修を通して見えてくる障がい者の自立の現状について書きます。

JILの歴史と役割

全国自立生活センター協議会(通称JIL)は、国内の自立生活センター(CIL)を支援する団体です。自立生活センターとは、1960年代にアメリカで起こった自立生活運動をもとにバンクーバーで創設され、その理念は日本にも伝わりました。日本では1980年代に最初のCILが設立され、現在までに全国で100を超える事業所が活動しています。私が暮らしている三重県にも「ピアさぽーとみえ」と「CIL・ARCH(シーアイエル・アーチ)」という2つの事業所があります。JILでは、どんなに重度の障がいがあっても、自分の人生において様々なことを選択し、決定し、自分の人生を自分なりに生きていくことを「自立」の理念として掲げ、支援事業を行っています。

JILに加盟している団体では、ピアカウンセラー養成講座や重度訪問介護従業者養成研修、自立生活体験室の実施などの活動によって、障がい者の自立を支援しています。私がJILを知ったのも、これらの支援活動を知ったことがきっかけです。自立生活センターが提供するサービスを利用することにより、重度の障がいがあっても地域で自立して生活することが可能となりました。

協議会について詳しくはホームページをご覧ください。
全国自立生活センター協議会

重度訪問介護とは

重度障がい者の自立には必ず、重度訪問介護従業者の資格を持つヘルパーさんが必要です。その資格を取るために必要な重度訪問介護従業者養成研修は、研修を行う事業所にも認可や介護福祉士などの資格を持った人が必要です。事業所に資格保有者がいないと研修を行うこともできないのです。三重県内の事業所でも3年前から研修を行うことができなくなりました。資格を得るためには名古屋まで研修を受けに行かなくてはならないのです。

介護福祉士の試験についても、年1回実施されるのが普通ですが、神奈川県が年2回に増やしている一方で、三重県では介護福祉士の試験の実施がなく、これも名古屋に受けに行くしかありません。

田舎ではヘルパーさんの手が足りないために、障がい者の自立が遅れているというのに、です。

自立生活体験室とは

自立生活体験室とは、障がい者が自立するため短期間ヘルパーさんを利用しながら生活し、自立生活プログラムに基づいた自己決定、自己選択、自己決断を実践します。私は自立生活体験室を2泊3日などの期間で33回利用しました。ヘルパーさんに24時間介助してもらいながら、親から離れて自己決定、自己選択、自己決断する暮らしを体験できたことで、今の生活へと繋がっています。

費用は三重県や私が住んでいる亀山市から補助があり、1日500円です。だいたいどこの都道府県も数百円程度で利用できますが、まだ自立生活体験室自体がない都道府県もあり、障がい者の自立に対する考え方にも地域格差がかなりあります。各都道府県にあるJILの理念を持った事業所が行える活動の差が、そのまま障がい者福祉の地域格差となっています。

ピアカウンセラーとは

ピア・カウンセリングは、障がいをもつ当事者同士で話したり、悩みや自立するための相談をしたり、障がいに対して前向きに向き合うサポートをします。ピアカウンセラーには障がい当事者しかなれず、それを養成するのがピアカウンセラー養成講座です。

三重県でも5年前までは、このピアカウンセラー養成講座を県の委託事業としてJILに加盟している事業所が実施していたので、私も受講することができました。講座を受けることで自分自身が前向きになり、障がいに対する考え方が変わるきっかけにもなり良かったです。しかし5年前にピアカウンセラー養成講座の予算が出なくなったため、以降は県内で受講することができなくなりました。事業所の活動が活発な地域では現在も開催されているので、地域格差がここにもあります。

本来であれば障がい者の自立に関する予算は国が出すべきですが、地方自治体に丸投げされている状態です。そして地方自治体も事業所が訴えなければ関心が無い、というのが日本の障がい者に対する自立支援の現状なのです。

亀山孝博

亀山孝博

男性、三重県亀山市在住。無職、私は重度障がい者で生まれつきの脳性まひで、脳性まひも色んな種類があり、アテトウゼ型と言いまして手足が勝手に動いてしまう。