日銀の量的緩和・ETF爆買いで日本人の老後は大丈夫?

異次元緩和は本当に国内経済に対して“効く”のかどうか?…この疑問については、あちこちから賛否両論が出ています。量的緩和政策をこれから続けていくことで、日銀が当初目標としていたインフレターゲット2%の水準まで景気を持ちあげることは可能なのでしょうか?

目的を忘れて現政権の株価対策になっていないか? 

現政権のことを「株価連動政権2.0」と呼んでいたのは改選前。2016年8月から第二次安倍内閣がスタートして、日経平均株価はボックス圏相場を続けています。英国のEU離脱の一件でガクンと16,000円を大幅に割り込んだのが記憶に新しいですが、米ドルが100円を大幅に切っているのに株価の下げはあの程度で、日経平均が反発して以後はゆるやかに回復しています。これは量的緩和の効果だと黒田日銀は胸を張るでしょう。…しかし国民目線で言うと、「年金の金をあれだけつかって、量的緩和なんて自爆行為はやめてくれ」の世界です。もっというと株価が低迷したからといって国内景気が低迷するとは限りません。

「株価と企業の元気はあまり相関が無い」という説も根強いのです。日本年金機構(GIPF,「クジラ」と呼ばれる)の世界一の純資産とはひとえに日本国民が“老後のために”40年以上かけて積み立ててきた、みんなのお金です。

安倍内閣は株価を下げたくない。日経平均株価が1万円を切ってしまうような事態になると、自分たちの終わりだ、その前に憲法改正を、と考えているのでしょう。だから無謀極まりない“日銀ETF爆買い”を官邸主導で行っているのです。

インデックス型投資のキモが国民にまるで理解されていない?!

個人的にはよく分からないのですが、たとえば「生活保護の不正受給」という問題ですとネットが炎上して誰もが“税金の無駄づかいは絶対に許さん”という意見を書き込むのですが、生活保護費はせいぜい単身で年間140万程度です。

それに比較して、現在の日銀がやっていることは、数十兆円単位の国民の年金積立金を(国民に無断で勝手に)株式投資に回しているような行為で、その投資結果をかぶるのは未来の国民です。株式ですから儲かるかもしれないし、損するかもしれない。インデックス投資について知識の無い日本人が多いのに、あれだけ自信満々でインデックス型日経平均を買い続ける黒田日銀を眺めていると、違和感があります。

年金運用の資産はポートフォリオ型運用です。従来の日銀(白川総裁時代の話)のポートフォリオは確かに“保守的”すぎた、だから安倍政権になって異次元緩和に切り替え、大量の安全資産をリスク資産の株式にリバランスした…と、現在の日銀からは正当化されます。

実はもっとアグレッシブでもよさそうな年金運用という一面はありますが、問題なのは、株価が暴落したら5年では回復しないだろうし、その間の評価損はさらに拡大するであろうという点です。ポートフォリオ運用は2016年8月に民進党がやっていたような「年金運用の評価損が〇兆円出ている」というような損はあれは損ではありません。あのネガティブキャンペーンは逆に民進党の側が「ポートフォリオ運用を理解できていないのでは…」という投資家連中の不興を買ったような話です。きちんと10年、20年後の通年リターンがどうなっているだろうか?という観点で、黒田日銀がやっていることは評価されなければいけないのです。

問題ありすぎ?20年後の日本のプライマリーバランスはどうなる?

日本国民はこの点についてどうかしている、数百兆円の税金(というよりクジラに積み立ててきた国民の老後の年金)を株式に無謀に投入し続ける政府・日銀に対して、もっと熾烈な抗議が上がらないのでしょうか。国内でも、日本のインデックス投資の草分けと言いますか、マネーの専門家が「長期投資、世界分散投資だからといって、これから先は確実に通年リターンが得られるとは“限らない”」と発言して、投資家ブロガーの間で“なんという物騒な発言か?!”と物議を醸していました。運用益が無ければ、わたしたちの老後の年金も無いのです。

藤井由起

藤井由起

40代前半、女性、広島県、産業翻訳者。老後の年金づくりについて情報収集するのが好きです。英語の勉強をしてきた期間が長かったので、洋楽・洋画も大好きだったりします。