東日本大震災以降、Twitterは災害時のリアルタイムコミュニケーションツールとして定着しました。3.11の時には、繋がらない電話の代わりの安否確認の際に利用されたり、帰宅難民たちに店内を開放したお店などが情報を発信したり、そして救助を求める声を発信したり、その機能を遺憾なく発揮しました。
災害時の情報拡散ツールとしてTwitterが利用される主な理由は2点あります。
- 文字数制限がある
- 140文字という文字数制限があるため、ツイートする際は、最小限の短い言葉にまとめなければなりません。そのぶん情報が集約され、読み手に簡潔に伝わります。facebookなどは文字数に制限がないため、ついつい文章は長くなりがちです。長くなると見直す必要もあるため、その事象が起きてから情報発信までのタイムラグはどうしても長くなってしまいます。
また、Twitterはリツイートボタンで簡単に拡散できるので、情報伝達のスピードが速く、大地震では震源近くで発せられたツイートを受信してから、遠方で揺れを感じるということがままあります。 - 情報が広く公開されている
- Twitterは匿名でアカウントを作成できるため、閉鎖的に使用している人は少ないのが特徴です。facebookは実名登録が原則なので、公人ではないユーザーは、情報を友人に対してのみ開放しているケースが少なくありません。
また、Twitterはハッシュタグ「#」で必要な情報を素早く検索することも可能です。情報の広がりという点でも、他のSNSよりも優れていると言えます。
今回の熊本・大分地方の震災においても、Twitterは避難や注意喚起のための情報発信ツールとして役に立っています。しかし一方で、誤報やデマの拡散というニュースも数多く流れます。こんな時だからこそ、私たちはあらためてメディアリテラシー※を高めていかなければなりません。
※メディアリテラシーとは…情報メディアを主体的に読み解いて必要な情報を引き出し、その真偽を見抜き、活用する能力のこと(ウィキペディアより)。
マスメディアはもちろん有名人にも求められる高いメディアリテラシー
4月14日に熊本で地震が発生した直後から、Twitter上で悪質なデマが広がりました。
Twitterで拡散された主なデマ
- 「動物園からライオンが逃げた」
- 「熊本の朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだ」
- 「川内原発で火災発生」
- 「イオンモール熊本で火災発生」
最初に第一報を流した人からすれば、「ちょっとしたジョーク」程度の軽い気持ちなのかもしれません。しかし、非常事態下では、被害を拡大させないために、良かれと思う善意のツイートが情報を急速に拡散させてしまいます。こういった情報を流すこと自体が言語道断であることは言うまでもありません。
こういったデマの被害を広げないためには、まず、公の情報を伝達する役割を担っているマスメディアに高いメディアリテラシーが求められます。上記のデマ情報では4番目のショッピングモール火災について、確認を怠ったフジテレビが誤報を流してしまっています。
テレビ局の情報収集に関しては、全体的に最近質が落ちているのではないかと感じています。朝の情報番組などでは、「今日の朝刊チェック」と称して、新聞をかいつまんで読み上げているだけのコーナーがあったり、週刊誌の後追いなのに出典を明示しなかったり、2日くらい前に「Yahoo!ニュース」で取り上げられた記事を注目のニュースとして、ドヤ顔で取り上げたり、厚顔無恥な報道姿勢が目に付きます。
ニュースソースとして多くの国民が信頼しているメディアなのですから、普段の情報収集のあり方から見直してほしいものです。
また、情報の拡散力としては、多くのフォロワーを持つ有名人のツイートの拡散スピードは恐ろしいものがあります。先に述べたようにTwitterは文字数制限があり、ツイートは言葉足らずになってしまうことが往々にしてあります。また、緊急時であり、短い文章であるがゆえ、文章を見直さずにツイートしてしまい(この記事では触れませんが、それが不謹慎狩りの一因にもなっています)、結果として誤った情報を流してしまう場合もあります。
影響力が大きいマスメディアや有名人ほど、より高いメディアリテラシーが要求されます。
一次情報に当たるのが難しい場合はTwitterアカウントで判断
災害時のTwitterの利用方法はTwitter Japan Blogにも掲載されているのですが少し整理してみましょう。
まず、リツイートする際の情報の信頼性は、リツイートのアカウントを遡って一次情報まで確認することが大切です。以下の公式アカウントは信用できると考えてよいでしょう。
Twitter Japanがフォローを推奨しているアカウント
また地震速報に関しては、こちらのBOTも信用できると思います。地震速報@earthquake_jp
ほかのユーザーが情報発信元の場合はそのアカウントが信用できるものかを判断しましょう。アカウントが作ったばかりのものだったり、フォロワーが少ないもの、ツイートにリンクがない、ツイートが伝聞ばかり、同じツイートを繰り返している等のアカウントはむやみにリツイートしない方が賢明です。個人ブログや2chが情報元の場合も要注意です。
行政などの公式アカウントや、地元の議員、評論家などの公人のツイートはデマを流すことはありませんので、比較的信用してもよいですが、メディアリテラシーが低いために誤報を流している可能性もないとは言えません。そのアカウントの日常のタイムラインなどから推測するしかありません。
行政の広報担当に求められるメディアリテラシー
前回の記事「くまモンは黙っている場合ではない!」で熊本県や熊本市のくまモンTwitterの対応が後手に回ったことを書きましたが、そもそも今回、デマや誤報が拡散してしまった原因のひとつが、当たるべき一次情報が少なかったというのがなかったでしょうか?
熊本市や熊本市消防が公式アカウントを所有していれば信頼のおける一次情報を数多く発信できたと思います。少なくとも熊本県広報課がもっと情報を提供するべきだったと思います。行政の公式アカウントがリアルタイムの情報発信でほとんど機能していなかった分、被災者の方たちは非公式のアカウントくまもとSAFTY@KumamotoSafetyなどを活用していたと思います。
熊本県広報課が頻繁な情報発信を行わなかったのは、メディアリテラシーが低かったのを自覚していたのかもしれません。もしそうであるならば、その判断は賢明であったと言えるかもしれません。市民から上げられてくる災害情報の真贋を判断できなければ、信頼すべき一次情報すら誤報となってしまうからです。
被災地の行政の現場ではツイートしている状況にないというのも分かるのですが、しかし二次被害を防ぐ意味でも、避難誘導や危険地域の情報などは迅速にツイートすべきです。
それには、住民から上げられる情報の見極めが重要です。ではどのように判断すればいいのでしょうか?
まず、場所、写真、これが最低限必要です。情報提供者に対しリプライで被害状況の詳細を確認できるとよいです。そのうえでハッシュタグを用いて、そのエリアで同様のツイートが流れてきているかを確認するべきでしょう。似たような一次情報が複数あれば裏付けとなります。そのうえで行政の広報担当者はタイムスタンプを入れて速やかにツイートします。その際は、#○○市災害 と入れます。
また、避難等が落ち着き、避難所等の情報をツイートする場合、140文字では詳細が記述できない場合があります。その場合は、「詳細はこちら」などと記してホームページなどに誘導するのですが、ここでも注意が必要です。その自治体のホームページがスマートフォンに最適化されていなければ、ホームページへの誘導は、文字は小さくて読みにくく、ユーザーに対し不親切以外の何物でもありません。もし自治体のホームページがスマートフォン対応していないのであれば、facebookページへ記載したり、Twitterに何回かに分けて掲載する方がよいでしょう(なお、熊本県のホームページはスマートフォン対応しています)。
自治体のホームページのサーバのスペックも確認しておく必要があります。市区町村単位では、急激なユーザーのアクセスにサーバがダウンしてしまうケースもあるからです。
(実際に数年前、千葉県の某自治体で断水時に住民からのアクセス過多でサーバがダウンし、ホームページにアクセスできないということがありました)
そして、何よりも、災害時のツイートの標準化を市民に周知徹底することが大切です。
タイムスタンプ、場所、写真、被害状況、#○○市災害。この情報を一次情報として記載するというルールが徹底していれば、誤報の拡散も少なくなるでしょう。
普段からの防災訓練も大切です。訓練のための訓練ではなく、本番を想定した訓練がよいでしょう。例えば、自治体に対して市民が一次情報を上げて、それを自治体が判断して住民にツイートする訓練です。このときに、偽の情報を混ぜてみると実践的です。
まずは、より多くの自治体が災害に備えてTwitterのアカウントを所有することが大切ではないでしょうか?