くまモンは黙っている場合ではない!【災害時のtwitter利用を考える1】

熊本・大分地震の被害がここまで大きくなるとは…

はじめに、4月14日から発生した熊本・大分地方の地震において、被災された方にお見舞い申し上げます。また、復旧活動・支援活動に従事しておられる関係各位には、敬服の念を込めて「お疲れさま、ありがとう」という言葉を述べさせていただきます。

正直にいうと、こういう時、当事者に対してかけるべき文章が出てきません。どんな言葉も、逆の立場だったらと思うと、陳腐なものに感じてしまいます。フリーライターを名乗りながら情けない話ですが…。

お見舞いの文章がうまく出てこない理由のひとつに、遠く関東圏に居住する人間として、今回の地震は「ナメていた」という自責の念もあります。14日の夜、地震後のTV中継でふつうに市内のアーケードを歩いている熊本市民の様子を見てしまったからかもしれません。東日本大震災や中越地震の時のように揺れを感じなかったこともあるでしょう。何より「3.11に比べたら…」という想いが頭のなかにありました。
14日の最初の地震が前震であるとは思いもせず、断続的に大きな地震が起こり、まさかここまで被害が拡大するとは予想もしませんでした。

現場で被害を目の当たりにし、自らも被災している熊本県や市の職員の方々がこのような油断をしていたとは思いませんが、ことTwitterによる情報発信については大きく後れを取ってしまったことは否めません。

県の広報はもっときめ細かい情報発信をするべき

地震からおよそ3時間後、このようなニュースがネットに流れました。
熊本の地震で自治体のツイッター対応に明暗「くまモン」は無言(THE PAGEより)

災害発生時における住民への注意、避難誘導など、行政からのいち早い情報発信は欠かせないものです。地域の防災放送、巡回による呼びかけ、ラジオやテレビの利用、インターネットの利用など、行政はさまざまな手段を用いて情報を発信します。なかでも、Twitterは、情報の拡散力などから災害時の情報発信ツールとしては有効です。

Twitter社も、災害時に役立つようにその使い方を周知したり、サービスの開発を続けています。9月1日の防災の日には、Twitterアカウントを持つ自治体とともにTwitterを利用した防災訓練を実施しています。

しかし、熊本県や熊本市はTwitterを災害時の情報ツールとしてうまく活用することができませんでした。そもそも熊本市はTwitterアカウントを所有していません。

4月14日地震発生後、熊本県・熊本市関連の最初のツイート

  • 熊本市長大西一史 4月14日 21:50 地震について注意喚起のツイート
  • 熊本県警本部 4月15日 6:33 地震についてはじめて言及
  • 熊本県広報 4月15日 8:59 始業時間にあわせてツイート
  • くまモン 4月14日 17:28を最後にツイートせず(個別のツイートは20:22が最後)

本来ならば熊本市をはじめ市町村がアカウントを持ち、消防からの情報を随時配信すべきです。県の広報も気象庁からの情報などをリツイートしたり、各自治体から集まってくる情報を整理して発信するなど、もっときめ細やかな情報発信をすべきです。

大西熊本市長が地震直後から唯一、ツイートしていますが、緊急事態でさまざまな対応を余儀なくされるため、当然ながらツイート数はそれほど多くありません。それでも、貴重かつ公式な情報源として、必要な情報を随時発信しています。
県警本部は翌朝6時30分頃に地震についてはじめてツイートしています。警察のTwitterなので、通常業務のツイートに加えて震災関連のツイートをしています。

熊本県広報課のTwitterは翌朝9:00です。始業時間になってようやくツイートしたと感じてしまいます。その後のツイートも緊急情報というよりは、いわゆる広報としての情報発信に徹しているという感じです。
広報課の地震発生後のツイートは4/15(金)8:59~18:52の間に7回、4/16(土)14:38に1回、4/17(日)8:44に1回、4/18(月)16:12~16:28の間に3回、4/19(火)9:31に1回、4/20(水)11:50~15:28の間に3回、6日間でわずか16回です。
県庁の方々は緊急事態に懸命に対応していたこととは思うのですが、結果として外から見たら、ほぼ勤務時間内だけのツイートのいわゆる「お役所仕事」、何のための広報なのかと言われても仕方ないのではないでしょうか?

そしてくまモンはいたっては、4/20現在、沈黙を守ったままです。

フォロワー45万を超える「くまモン」だからこそできるツイートがあるはず

くまモンの沈黙について、熊本県は、くまモンオフィシャルホームページに4月15日付で以下のようなコメントを発しています。

「現在、くまモンの公式SNSでの情報発信が行われない事により、くまモン隊の安否について多くの皆様にご心配をいただいております。
 くまモン隊は、この度の地震に見舞われた方々の事を最優先に行動しているところであり、SNSでの情報発信については控えておりますので、御理解いただきますようお願いいたします。

くまモン(のなかの人たち)が4月14日以降、震災対応に追われて、Twitterどころではないというのが正直なところでしょう。しかし、45万人を超えるフォロワーを持つ「くまモン」のアカウントだからこそ、利用しない手はないと思うのは私だけでしょうか?
市民、県民に関する注意喚起、避難所等の正しい情報の発信、はげましなどや、県外の支援に対するお願いや義援金の募集など、くまモンのアカウントだからこそ効果を期待できることがたくさんあるはずです。県の広報のTwitterなどよりもよほど効果があります。なかの人については、普段と違う人がツイートしてもいいと思います。

くまモンでしかできないツイートをするべきです。

自治体はTwitterの防災訓練に参加すべき!

これらのことから、熊本県は災害時の情報発信ツールとしてTwitterを活用できていないと言えます。あるいは活用するつもりがないとも言えるかもしれません。
総務省発行の平成27年版情報通信白書によると、Twitterの利用率(1年以内の利用経験率)は31%です。熊本県や熊本市の利用状況は分からないのですが、全国平均の半分と見積もったとしても、15%ですから拡散力もあるtwitterを災害時の情報発信ツールとして活用しない手はないのです。

平成27年のSNS利用率

災害時に県が適切な情報発信をできなかったことについては、ひとえに準備不足、想定不足でだと言えます。9月1日のTwitterの防災訓練に参加していれば、リアルタイムで住民に信頼のおける情報発信ができたのではないでしょうか?

このことは熊本県に限ったことではありません。
昨年の9月1日に防災訓練に参加した自治体は、都道府県でわずか10%(5/47)、市町村にいたっては4%(70/1741)しかないのです。

もちろん、Twitterが万能とは言いません。しかし災害時の情報発信ツールとして有効であると言われてるのですから、少なくともアカウントを登録し、防災訓練を実施してみればよいのではないでしょうか? 防災訓練の結果、効果的かどうか判断してもよいのではないかと思います。

今後の災害時のTwitter活用に関して、熊本県や熊本市、周辺自治体はどのように考えているのか? 熊本の県議会議員や市議議員、いや全国の地方自治体の議員の方には、ぜひ議会にて質問していただきたいものです。

自分の居住する自治体が昨年9月1日の防災訓練に参加しているか知る方法

ツイッターに以下の2つのハッシュタグを付けて検索してください。
#全国防災訓練 #○○市災害
防災訓練に参加した自治体は、そのツイートが表示されます。

熊本地震義援金はこちら 

武山雅樹

武山雅樹

40代男性、千葉県在住のフリーライター。グルメ雑誌、歴史雑誌、ペット誌、医療系フリーペーパーなど幅広いジャンルで活躍。最近は企業のインタビュー企画やWebサイトのライティングなども手がけている。