9月28日に衆議院が解散されました。10月22日の投開票に向け、選挙戦の幕が切って落とされました。
今回の衆院選は、野党の選挙準備が整わないうちに安倍晋三総理が仕掛けたという見方がありました。ひそかに結党準備を進めていた小池百合子都知事が「希望の党」を立ち上げ、民進党前原誠司代表の実質的民進党解体、希望の党への合流。希望の党小池百合子代表の「排除」発言。枝野幸男氏の立憲民主党の立ち上げと、短い期間に目まぐるしく政局が動きました。
夏の都議選では都ファ旋風を巻き起こした、小池氏ですが、「排除」発言に続いて、都民ファーストの会のファーストペンギン、音喜多駿都議と上田令子都議が離党するなど、はやくも希望の党は失速気味。いわゆる“排除された”側のリベラル派を結集した枝野立憲民主党がにわかに注目を集めています。
そんなこんなで10月10日に衆議院議員選挙が公示。各党の選挙の「顔」となる有力政治家は、全国で仲間たちの応援に駆けずり回ります。
10月11日、千葉県JR松戸駅前で、自民党のプリンス小泉進次郎氏が応援に入るとの情報をキャッチ。調べてみると、なんと同日のほぼ同時刻、JR松戸駅前で立憲民主党の枝野幸男代表が応援に入るというではありませんか! 松戸市のある千葉6区には選挙権がないのですが、ちょっと面白そうなので、観に行ってみました!
自民、立憲民主、希望、維新が立候補する千葉6区
ちなみに、松戸市のある千葉6区は以下の候補が立候補しています。ちょっとだけ情勢分析をしてみましょう。
- 渡辺博道(自民党)
- 67歳・前職・当選回数6回 今回、小泉進次郎が応援する人
- 生方幸夫(立憲民主党)今回、枝野幸男が応援する人
- 69歳・元職・当選回数5回
- 遠藤宣彦(希望の党)
- 54歳・元職・当選回数1回
- 星 健太郎(日本維新の会)
- 37歳・新人・当選回数0回
希望の党と日本維新の会は選挙協力をしていますが、候補者調整ができたのは東京都と大阪府くらいで、千葉県はそれぞれ候補者を立てていたりします。千葉6区がまさにそうで、遠藤、星両候補はちょっと厳しい選挙になる感じがします。
一方、自民党候補の渡辺氏は前職(先日の解散まで衆議院議員だった)の強みと、自公の固い結束があり、組織票と実績で一歩リードしているといったところでしょうか?
当選5回の実績のある生方氏がそれに続いていると言えます。立憲民主党の急な立党にも関わらず、共産党は野党共闘のため、公示直前に候補者を引っ込めました。このあたりは流石といった感じです。生方候補には共産票も期待できますから、基本的には自公VS民共といった図式の戦いになります。連合千葉が生方氏に推薦を出していることも生方氏には強みです。
ただ、元の民進支持者の一部は希望の党に流れるのでその分が立憲民主には不利です。もし、保守系の無党派層が自民・希望・維新に割れた場合、自民も票を減らす可能性があります。
そういった意味でも、小泉進次郎氏と枝野幸男氏の応援は選挙戦の重要ポイントになりそうです。
宮本武蔵作戦? 進次郎、定刻に現れず。そしてオドロキの発言
予定では15時20分から小泉氏の街頭演説が始まり、15時30分から枝野氏の街頭演説が始まります。15時少し前に松戸駅に到着したのですが、街頭演説が行われる西口はすでに多くの人だかりができていました。
松戸駅西口の駅前はデッキになっており、そこに立憲民主党のステージが設置されています。そして、デッキの下の道路に自民党の選挙カーが停車しており、道路は封鎖状態。警察の方が見物人を誘導しています。
まずは、小泉氏の演説を聞こうと、デッキの下に降りて選挙カーのあたりでいい写真を撮れるポジションを確保しようとウロウロしていると、「小泉さんは少し遅れています」とのアナウンスが……。予定時間を過ぎて10分経っても小泉氏は現れません。
これでは、枝野氏の演説が始まってしまいます。ひとまず、デッキの上に上がり、枝野氏の演説を聞きに行くことに。枝野氏の演説が始まってほどなく、小泉氏が登場。デッキ上の聴衆も6割くらいが、デッキ下の小泉氏に注目します。
(むむむ、これは宮本武蔵作戦か!? 枝野氏の演説に自分の演説をぶつけるつもりか? やっぱり人気者の進次郎がみんなもっていってしまうんじゃないか。どっちの話も、というかどっちの写真も撮りたいのに)とすっかりミーハーおじさんの気持ちでいたのですが、そんなとき、選挙カーに乗った小泉氏がこんなことを言ったのです。
「私は今からしゃべりません。あちらの話が終わるまで待ちましょう。皆さんも枝野さんの話を聞いた方がいい。両方の政策を聞いて、判断しましょう」
そしてマイクを置いて、180度、ただひたすら聴衆に手を振るのです。
なんて男前なんだ! こういうことをアドリブでサラッと言えてしまう。いや、もう、これでイチコロですよね。むしろ政策聞かないで判断しちゃう人を増やしちゃってるんじゃないかって思いました。おかげで私は枝野さんの話も聞くことができたわけですが……。
ゆるキャラ枝野のパワフルな演説「皆さんの作った政党」
さて、デッキで枝野氏にカメラを向けると、政界一のカラオケ好きという噂もあるくらいの枝野氏、マイクを持つ姿がなんだか、のど自慢大会で謳う、おじさんみたいに見えてしまいます。
聴衆も半分くらいが、デッキ下の小泉氏を見ていることを知ってか、「今、ここにいる人たちは、イケメンよりもゆるキャラが好きな人たちだと思います」と笑いを誘う“つかみ”で聴衆を引き込むと、「でも、政治は見た目で選ぶのではありません」と切り替え、ここから、福耳の着ぐるみみたいなおじさんの力強い演説が始まります。
なぜ立憲民主党が生まれたか、右、左ではなく上と下の新しい対立軸、下からの、草の根からの民主主義を作り出していきたい、下から支えて押し上げる経済、云々。
理論的でわかりやすく、かつ聴衆をその気にさせる素晴らしい演説だと感じました。そしてこの言葉が聴衆の心を射抜きます。
「日本ではじめて、国民の皆さんが政治家を動かして作った党、それが立憲民主党です」
twitterで話題となった「枝野立て」の声、この多くの声の後押しで生まれた政党であり、日本ではじめて国民が立ち上げた政党だと枝野氏は言うのです。「日本ではじめて」の真偽のほどは定かではありませんが、「はじめて」「ゆいいつ」とかプレミアム感のある言葉にはコロッと来てしまうものです。そして、聞いている聴衆を主役だと語る。聴衆も高揚していくというものです。
枝野氏の演説の後、小泉氏の演説も聴きました。次の応援にも行かなければならない小泉氏、どうしても演説は短くなってしまいます。
小泉氏は短い時間のなかで、保守とかリベラルとか、右とか左とか、イデオロギーの対立を煽るのは古いと言います。そして高齢者だけでなく、若い人も苦しい人は助けるべきだと思うが、どう思うか?と、聴衆に問いかけます。決して高揚せず、落ち着いて語りかける小泉氏には自らを信じる強い力を感じます。
演説の最後には、「立憲民主党のみなさんもありがとうございました。最後までお互い健闘して、有権者の皆さんの審判を仰ぎましょう」と余裕を感じさせる挨拶でした。
今回の街頭演説、個人的には演説内容は枝野幸男氏に軍配が上がるかなと思いました。しかし、政治家としての器の大きさというか、まだまだ大きくなるという底の見えなさを小泉進次郎氏には感じました。
みなさんも、街頭演説、行ってみてください。いろいろと考えさせられる機会がそこにはあります。