受動喫煙防止条例は都議会選挙の争点になりうるか?

受動喫煙防止に向け、厚労省・医師会・都がスクラム

5月31日はWHOが定めた世界禁煙デーです。世界各地で禁煙を呼びかけるイベントなどが催されました。
東京では、この日に先駆けて、5月27日に厚生労働省、東京都医師会、日本対がん協会の主催で、「タバコフリーサミット2017・東京」が開かれました。

同サミットは午前・午後の2部構成で行われました。
午前の部「第17回全国禁煙推進研究会」では、今村聡日本医師会副会長を座長とするシンポジウムや、厚生労働省健康局の正林督章健康課課長の「受動喫煙防止対策の徹底について」をテーマとした講演、尾﨑治夫東京都医師会長や産婦人科医の宋美玄氏らによる討論会が行われ、タバコの被害をなくすための環境づくりに向けて活発な議論が交わされました。

「東京の空気が一番、おいしくなる日。」と題した東京都医師会主催の午後の部では、小池百合子東京都知事が冒頭のあいさつに立ちました。
小池知事は「受動喫煙防止条例を作っていくことを約束して知事になったので、約束は守っていきたい」「都民の健康増進はもちろんだが、オリンピック憲章によるオリンピック・パラリンピックのホストシティの立場であるということを認識しなければならない」「スピード感を持ってしっかり取り組まなければならない」と述べ、受動喫煙防止対策条例の早期実現に向けて力強い言葉を発しました。

小池知事のあいさつの後、禁煙支援やタバコのない社会、タバコのない未来をテーマとしたパネルディスカッションが行われました。
「タバコフリーサミット」は盛況のうちに閉会となり、厚労省・医師会・都がスクラムを組んで、受動喫煙対策に取り組む姿勢が強く打ち出された会となりました。

受動喫煙防止の法整備を巡っては、小規模のバーやスナックなどを除く飲食店を全面禁煙とする厚生労働省案に対して、自民党は100平方メートル以下の飲食店での禁煙を認めるという案(事実上骨抜きに近い案)を提示し、調整が難航しています。しかし「タバコフリーサミット」で勢いを得た厚労省は、オリンピック・パラリンピックの開催される2020年までに飲食店や職場、行政機関、医療機関での受動喫煙をゼロにするという数値目標をがん対策の基本計画の案に盛り込む方向で調整するという強気の姿勢を見せています。

このように見ると、受動喫煙防止対策を巡り、自民党VS厚労省&小池都知事&医師会という構図が見えてきます。
7月の都議会議員選挙では、この受動喫煙防止対策が選挙の争点になりそうな気配です。

受動喫煙防止条例は自民党も賛成

ところが、今回の都議会議員選挙の各党の選挙公約を見ていると、ほとんどの党が受動喫煙防止条例を制定すると言っています。

都民ファースト

受動喫煙防止条例をつくります

民進党

受動喫煙ゼロで、都民の健康を守ります。/歩きタバコ禁止! 都独自の条例を制定します。/公共施設は全面禁煙。学校や病院は、敷地内も含めて全面禁煙。/支援強化と罰則で実効性を担保します。

共産党

罰則規定を含む受動喫煙防止条例を制定します

公明党

原則、屋内全面禁煙を内容とする罰則規定を持った「受動喫煙防止条例」を制定

自民党

都民の健康増進を図るため、原則、屋内全面禁煙とする都独自の罰則規定のある受動喫煙防止条例を制定します!

東京維新の会

未成年入店禁止の店で、喫煙表示がある75㎡以下の店を除き、飲食店は禁煙とし、受動喫煙を防止します。また五輪に向けて2年以内に規制を見直します。

東京・生活者ネットワーク

子どもを受動喫煙から守る条例をつくる

2017年都議会選挙の各党の公約はこちら 

東京・生活者ネットワークは記載がありませんが、そのほかの政党は、みな受動喫煙禁止条例を制定すると書いているのです。国レベルでは厚労省とバチバチやっている自民党も、都議会では受動喫煙はNoなのです。しかも罰則規定つきです。

※東京・生活者ネットワークは受動喫煙防止に関する政策を6月上旬に追加で盛り込みました。また、受動喫煙防止対策については、5月に受動喫煙防止対策についてという文書を発表していました。(6月8日19時追記)

どうやら、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、東京都は国の法律に関わらず、受動喫煙はNoという答えを出しつつあるようです。
受動喫煙防止条例の制定ということに限っては、都議選の争点にはならないでしょう。

ただし、各党の公約には条例の内容まで深く示されてはいません。
罰則規定のある条例制定を訴えている党でも、実際には店舗の面積などによって条件緩和するということもあり得るのです。受動喫煙防止の規制対象については、各党の街頭演説などに耳をすませ、しっかりと考える必要がありそうです。そいう言う意味では、争点のひとつということになるかもしれません。

武山雅樹

武山雅樹

40代男性、千葉県在住のフリーライター。グルメ雑誌、歴史雑誌、ペット誌、医療系フリーペーパーなど幅広いジャンルで活躍。最近は企業のインタビュー企画やWebサイトのライティングなども手がけている。