日本維新の会に都議会議員選挙の政策を聞いてみた
2017年6月6日、日本維新の会、東京都総支部を取材しました。ご対応いただいた幹事長兼事務局長の藤川晋之助氏に、都議会選挙の政策についてお話をお伺いしました。(インタビュアー:亀山崇)
知事の忖度はしない。是々非々が二元代表制の基本
―まずは、小池知事に対する政治スタンスについてお聞かせください。
藤川 国政もそうですが、維新の立場は是々非々なんです。与党でも野党でもなく「ゆ」とうなのかもしれないですけれど、いいものはいい、悪いものは悪いとはっきりさせるというスタンスです。
小池都政が、例えば200億円の議会対策費をオープンにして自民党から取り上げたとか、あるいは見える化の作業とか、すごくいいこともしているので、それは当然評価すべきことだと思います。しかし、そのあとの、豊洲の問題やオリンピックの問題など、都知事としての決断というものは結構遅いですよね。
維新は3月9日に豊洲に移転すべきだと、はっきりと提言させていただいたわけですけど、そういう立場から見ると、選挙に向けてすべてが動いているみたいな、それは本当の意味で改革の姿勢ではないのではないかなと思いますね。
都議会がみんなで知事の忖度をしてしまっては二元代表制の意味がなくなりますから。
早急に豊洲に市場を移転し、責任問題は切り離して考えるべき
―築地市場の豊洲移転に関して、維新の会は早い段階で豊洲移転を提言しています。これは現在の土壌汚染対策で十分安全であると判断しているのですか?
藤川 そうです。明らかに、東京の地下水なんてどこも飲み水にしないじゃないですか。でも豊洲の地下水だけ飲み水基準で決めてしまう。だから安全だけど安心じゃないとか言う。これはどう考えてもおかしい。地下水を飲むというのならば別ですけど、安全は担保されているわけです。今、築地市場を掘ったらもっとさまざまな問題が出てくるはずです。
そのうえで、1日豊洲を開けておくと503万円のお金が消えていくわけです。そういうことを考えると早く決断しなければならない。ダメならダメで、保証も大変ですけど、都政が主体で決めなければいけないのに、先延ばしするだけで相当程度の税金が使われるわけですからね。
同じ豊洲移転を主張していても自民党と違うのは、我々は改革派だということです。
自民党の場合は盛り土を発見できなくて、役所の人たちもどこまで知っていたというのが明確にならないまま、百条委員会もなんのために開いたのかわからない状況です。そこはしっかりきちんとすべきです。
―豊洲移転に関しては、移転問題と、盛り土などの責任問題は切り離して考えるべきだと。
藤川 そうです。自民党のいままでやってきた体制の問題点を指摘しながら、都知事の改革の姿勢が本物であってほしい。都民のための政治・行政をやってほしいわけですから。都民のためのちゃんとした判断をしてほしいということですね。
―豊洲のイメージを戻していく作業がすごく大変になってくると思うんですが。
藤川 安心という部分は、都知事が安全のなかでどう安心を作り上げるかということですが、みんなが思っているほど心配することはないと思っているんです。決断してそっち(豊洲)に行ってしまえば、自然と落ち着くと思います。都知事がちゃんと決断をして、しっかりとリーダーシップをとれば、しばらくすればそんな危惧すべきことにはならないと思いますね。
究極の目標は統治機構の改革、第一歩は身を切る改革から
―現在東京が抱えている一番の課題をお聞かせください。
藤川 維新が言っていることは、国政も都政も大阪も同じで、統治機構の改革です。維新の会は大阪都構想をいってましたけど、東京はその先ですね。東京都の中における権限の移譲です。
区市町村という身近な基礎自治体にどんどん権限を移譲していって、担当してもらう。福祉の問題とか、教育の問題とか、本当に都民生活に身近な問題というのは区など基礎自治体のレベルでやるべきであって、都のやるべきことはもっと大局的な防災とか財務とかを含めた調整機能にあるわけです。
ロンドンに倣って「グレーター東京」と言っているんですが、ロンドンは都議会議員が25人で、各特別区がしっかりしているわけです。東京もこれだけ中央集権になってきて、次は分権の時代をつくるというのが、道州制導入の我々の一番の眼目なんです。単純に言うと、自民党や民進党は大きな政府。我々は小さな政府。その違いですね。
なかなか難しいですけど、そこまで踏み込まないと真の改革はできないというのが、都民ファーストと我々のちがうところです。
―統治機構の改革ということになると、今回の選挙では候補者数も少なく、現実問題としては実現は難しいですよね。現段階では議会で発言力を強めていって、次、あるいはその次にということですか?
藤川 そうですね。統治機構改革はビジョンで、究極の目標です。
それに向かって何をやるのかというと、まずは改革する姿勢を示すために、身を切る改革をしっかりやるということです。東京都が地方自治体のなかで一番努力していない天下りの全廃とか、あるいは都議会議員の定数の削減とか、これまでは努力の跡がみられないわけです。そこは一番主張していきたいというところですね。
そして大阪のように教育の無償化をしたい。大阪は私立高校まで無償化が成功しているわけですね。あとは地下鉄の民営化とかですね。
2020年以降の諸問題は対処療法では解決しない。長期ビジョンを語れる人を育てることが重要
―2020年東京オリンピック・パラリンピックを成功させるべく、都も国も進めていると思うのですが、大会後の東京ということも大切です。2020年東京オリンピック・パラリンピック後の東京についてどのようにお考えですか?
藤川 2020年問題というのは東京だけではなく、全国的にひとつの大きなポイントになっていきます。
今、大手のゼネコンの8割ぐらいの技術者は東京に集中しています。40代50代の優れた連中です。なぜなら東京には仕事がいっぱいあるわけです。オリンピックまでは。その人たちが現場にいながら2020年には我々も大変な時代になると言っています。その後の展望が見えないとも。
ではどうすればいいのか? できるかぎり身を切る改革などを進めていってスリムな東京をつくり、少子化社会、高齢化社会などそれぞれの対策がしっかりしていれば、人口減少が急激に進むということは起こらないと思います。
安倍首相も、小池都知事も、待機児童をゼロにするって言ってますけど、実際にはできていない。なぜできないのかといったら、制度上の問題がものすごく大きい。ですから2020年の東京に向けて、それにふさわしい東京都の制度を研究し議論するべきなんです。
同時に経済政策。イノベーションをどれだけ生み出せるか。町工場のひとたちがグローバル社会の中で、技術力を維持しながら生き残っていくというのは素晴らしいと思うのです。そういう人たちを支える政策を進める。
我々は自立を求める政策が多いので、教育を通じてもっとよい人材を輩出していくことで変えていくしかないと思っています。小手先の政策や対処療法で2020年問題に対応できるかは懐疑的です。
とはいえ、諸政策は細かく提言しています。規制緩和を徹底するとか、観光強化などです。オリンピック・パラリンピックで東京が世界に知られるわけですから、“東京はすごい街だな”と観光で訪れた人に知ってもらう。
―都政改革や2020年問題は、対処療法では難しいということですね。日本維新の会は、統治機構改革などの長期的なビジョンを示しますが、他の政党はあまり長期的なビジョンを示していないようですが、これについてはどのようにお考えですか?
藤川 それだけ日本が課題をたくさん抱えていて、21世紀の後半が見えない状況で、50年後の世界の中での日本の位置なども分からない。長期的ビジョンを策定しきれないのだと思います。
今、未来を語れるだけの、能力、発想、企画力とかそういうものを持ちえた人が少なくなってきているとも言えます。だから先見性のある議論というのはなかなか難しくて、単なる衝撃を与える話はいっぱいあるけれど、もっとまじめに10年、20年、30年の展望の中でやるとすると地味な作業ですからね。
2020年以降のことを考えると、ハードウェア(統治の仕組み)を変えなければいけない時代に来ている。じゃあどう変えようかという議論に発展しない。維新の会だけが言っていても、みんな目の前の対処療法に行ってしまうのですね。有権者の人たちも、目の前の保育所問題とか、対処療法に目を向けがちです。あとのことは関心があっても答えを出せない。そこの方向性についてかなり真剣に言い続けているのが日本維新の会なのです。
長期的なビジョンを掲げて、そこに向かって進もうという“意欲”と、そうしなければだめだという“強い気持ち”は日本維新の会が最先端にいるという実感があります。今は少数派で理解されなくても、10年20年たったら当たり前の時代がくるだろうというように思っています。
そう考えるとやはり教育が重要なんです。優秀な若い人たちを育てていくシステムというものを、教育の無償化を通じてもっともっと伸ばしていかねばなりません。
自民党と違うのは、自民党は単に愛国心、国家主義的な教育を目指しているけれど、ぼくらは違って、もっと生き生きとした人間力のある子どもたちを育てるという意味で教育に力を入れています。
情報発信は議員の使命。情報を提供して国民が自分の頭で考え判断する
―政治家の情報発信についてお聞かせください。日本維新の会には、橋下徹という圧倒的な発信力を持った人がいましたが…。
藤川 橋下さんの情報発信力が強いのは、その下地にある勉強量が違うからなんですね。講演会ひとつでも、よくここまで考えるなと思います。一所懸命に勉強して、毎回真剣勝負で講演に臨んでおられる。そういう姿勢を維新の会の政治家のひとたちにも学んで欲しいですね。橋下イズムじゃないけれど、それに近づけるようにならなくちゃいけないですよね。
―所属議員や候補者に対して、情報発信の教育や勉強会などはしていますか?
藤川 あまりやってないですね。基本的に個々の意識の問題ですから。
けれども、情報発信こそ議員の使命ですよ。当たり前のことなんです。国民の代表として、引っ張っていくわけです。国民に対しては、情報提供をがんがんやらなければならない。普段の政治活動の結果が選挙の結果につながるのが一番の理想なんですね。それは情報発信の差だと思うのです。
橋下さんは、府知事時代も、市長時代も、難しい話を街頭で一所懸命やり続けていました。はじめは何を言っているのか分からなくて、ひとは集まってこなかったのに、そのうちどんどん集まるようになって。やればできるんだってひとつのお手本だと思うんです。
アメリカがすごいのは、100万枚までチラシなどの通信は政府が認めているんですよ。情報発信しろということですよ。国民に対しての義務であると。国民に対して情報を提供して、自分の頭で考え、自分の判断で政治を支えるという、文化、政治風土を変えていく戦い。それが民主主義を豊かにしていく戦いなんですけど、それを政治家はやらなくては駄目だと。それがなさすぎるのです。
政治について考える機会を設けること、平等な議論をする環境を整えることが必要
―若者の政治参加、低投票率についてはどうお考えですか?
藤川 1回選挙にいってばかばかしくなってしまうのかもしれません。それは政治に対する訓練ができていないからだと思うのです。
例えば、「自民党と民進党の違いってなんですか?」という問いにきちんと答えられる人がどのくらいいるのか。日本国憲法を改正するとかいうけれど、何をどう改正するのか真剣に考えたことがあるのか。あるいは日本には天皇という存在があるけれど、国家と天皇の在り方、こういう国のカタチを意識したことがあるのかと。
考える機会というのが、教育を含めてないんです。いきなり社会人になってね、「どうなの?」って聞かれても、基本的な認識、基本的な情報が頭の中にコンパクトに入っていないとやっぱりなんとなくポピュリズムに陥ってしまうし、なんとなくマスコミでいわれていることにその通りだなって思ってしまう。
アメリカでは、クラスを2つに分けて、こっちのグループは共和党支持、そっちのグループは民主党支持って決めてディベートをさせるわけです。一通り議論が終わったら、こんどはそっくりそのまま、逆の立場にたって議論をしなさいと。ディベートの練習、訓練をするわけです。
もっと平等な議論をきちんとさせようという環境が必要です。どんな考え方だろうが、その子の頭の中で真剣に考えるための情報を提供するというような教育が大切です。