移民で解決?日本の社会問題。安易な考えには要注意!!

今、日本では人手不足が深刻になっています。人手不足倒産という新たな現象も起こっています。人を募集しても集まらない。人がいないから仕事を受けられない。そして倒産というものです。こうした人手不足はサービス業、建設業、運輸業等を中心に深刻化しています。少子高齢化が進む中、今後も人手不足は深刻化しそうです。

こうした中、問題を解決する方法の一つとして移民の受け入れが議論されています。移民の受け入れには賛否両論あり、今のところ反対意見が大きいようにも思えます。
日本に移民は必要か。移民の受け入れについて考えてみました。

日本が抱える人手不足の現状

2018年9月の「経済報告」(政府発行)によると、日本の景気は緩やかに回復しているとのことです。しかし、景気が回復する一方で、中小企業は人手不足に陥っています。帝国データバンク(2018年)の調べによると、正社員が不足と感じる企業は49.2%とのことで、これは1年前(2017年4月)に比べ5.5ポイントも増加しています。4月としては過去最高の数字とのことです。

この背景には景気の回復による企業の雇用改善という面もありますが、少子化による生産人口の減少、とくに若年層の減少が大きな影響を与えているといえます。

他方、「平成29年度情報通信白書(総務省)」によると、2015年には7728万人いる生産年齢人口が2050年には5275万人に減少すると見込まれています。35年後には約2453万人も労働人口が減少するというのです。つまり、年間70万人の労働者が減っていくことになります。日本の人手不足は年を重ねるごとに深刻化するのは明らかといえるでしょう。

日本の問題を一挙に解決する移民政策!?

こうした人手不足は人気のない仕事に大きな打撃を与えます。仕事を選べるのであれば魅力ある仕事を選ぶのは当然です。となると人気のない仕事は給料を上げるしかありません。しかし、中途半端な昇給では効果は薄いでしょう。

一方で、人手不足の対応としてシニア世代の活用やAIの導入等、さまざまな検討がされています。ですが、建設業等の体力が必要な仕事にシニア世代を活用するのは困難といえます。AIも本格導入には時間がかかりそうです。

そうなると即効性が高く効果が見込まれる移民の受け入れはどうか、ということになります。日本が移民の受け入れを積極的に進めれば、人材を確保でき人手不足は解消されそうです。そして若い年代の移民を受け入れることで高齢化に傾いた人口ピラミッドを改善することもできます。高齢化社会への有効な対応にもなりそうです。さらに、労働力人口が増加すれば、その分税収も増えます。こうしてみると現在の日本が抱える問題を解決してくれるようにも思われます。

他方で、母国に仕事が無い外国人にとっては新たな仕事を得られる機会になります。低賃金の母国に比べ飛躍的に賃金が高い日本で働けるのであれば、日本の最低賃金でも十分なメリットがあります。

メリットが大きい移民政策に反対!?

しかし、こうしたメリットが大きい移民の受け入れには、さまざまな反対意見もあります。

第一に治安の悪化が懸念されることです。日本に来る移民は、賃金がかなり低い国からの流入が予想されます。統計的に労働賃金が低い国の犯罪率は高い傾向にありますので日本の治安を悪化させてしまうというものです。犯罪の輸入です。

ですが、これは政府の政策により防げるように思えます。移民の受け入れの審査を強化し、犯罪傾向のある者が入国できないように管理することで、十分対応可能に思えます。

第二に奴隷的労働の問題です。日本人が嫌がる仕事を安い賃金で外国人にさせることに対する精神的な抵抗です。外国人を奴隷のように扱うとの反対意見です。

ですが、移民が得る仕事は誰かがしなければならない仕事です。移民を雇わないのなら日本人がすることになるでしょう。そうした仕事を奴隷的なものと考えることは不自然です。日本人がするなら立派な仕事だが外国人がすると奴隷的労働、とはならないでしょう。この点、賃金が奴隷的という意見も有ります。しかし、賃金は働く人がどのように思うかの問題であり、周りが決めることではないと思います。母国に比べて高い賃金を得られるのであれば移民にとって奴隷的とは思わないでしょう。

反対の本質は「異質」の拒否-日本の歴史と文化-

その他にも反対意見はいろいろあります。ですが、こうした反対意見の本質は「異質」の拒否にあるのではないかと思います。

日本は歴史的にみても外国との交流が少ない国です。古く江戸時代には長く鎖国を続けてきました。島国であるがために異なる国の人が入ってくることは少なく、国内の民族も海外のように多様ではありません。

こういった歴史や特性がある日本人は表面的に外国人と接することは好んでも、深い関係は望まないといえるでしょう。つまり、日本人は観光で来る外国人には非常に好意的で親切です。しかし、日本に住むとなると話は別、という考えではないでしょうか。ましてや犯罪率の高い国からの移民となればなおさらだと思います。

こうした考えは長い日本の歴史に基づく国民性であり否定される感情ではないとも思われます。

移民は安易な解決策!?日本の未来は日本人で

移民の受け入れ政策は即効性があり、日本のさまざまな問題を解決してくれる簡単な方法といえます。いまの日本がおかれている状況からすると、日本の歴史や国民性を度外視してでも進めなければならない政策であるという考えもひとつです。

しかし、ここで強く認識しておかなければならないのは、外国人の日本に対する関係は一時的なものだということです。

西ローマ帝国は「傭兵制」により滅亡したとの説があります。傭兵は国に対する愛着がなく責任もありません。利益関係がなくなれば、それまでです。そこに西ローマ帝国が滅亡した要因があるともいえます。

もしも日本社会が傾いたとき移民はどのような行動をとるのでしょうか。利益ある限りは日本のために働いてくれる移民も、日本から利益を得られなくなれば離れてしまうのではないでしょうか。そうなると、移民に頼る構造となった日本社会は壊滅的なダメージを受けるといえます。

日本の責任を担うのは日本人であり、日本の将来を担っていくのも日本人です。とすれば日本人として人手不足をどのように解決していくか、安易な方向でなく、国民が責任をもって考えていく必要があるといえるでしょう。

新 移民時代――外国人労働者と共に生きる社会へ

二宮憲志

二宮憲志

40代前半、滋賀県在住、男性、元公務員、元コンサルタント、現在はフリーランス。30代は仕事をしながら勉強に励み、政治学と経済学の学位を取得。日本社会の柔軟性のなさに日々疑問を感じながら、日本の政治と経済を考えています。「言葉で日本に振動を」、そんな気持ちで発言(政say)していきます。