AI(人工知能)が仕事を奪う?AI時代に必要な仕事の能力とは!?

2015年に野村総合研究所が、「AI(人工知能)に奪われる仕事」のランキング10を発表しました。あれから3年がたちましたが、ランキングに挙げられている仕事はいまのところ健在で、急速にAI(人工知能)が導入されたという動きは見られません。

まだ3年しかたっていませんので何ともいえないところですが、今後どうなっていくのでしょう。本当にAI(人工知能)は人間の仕事を奪うのか。仕事の未来について考えてみました。

AI(人工知能)が得意な仕事、苦手な仕事

野村総合研究所は、オックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授とカール・ベネディクト・フレイ博士と共同で2015 年に日本の仕事とAI(人口知能)について研究をしました。

その結果によると、今ある日本の仕事のおよそ49%が、人間ではなくAI(人口知能)によって代替することが可能であるとされました。つまり、私たちの2人に1人の仕事はAIに奪われる危険があるというのです。

研究ではAI(人工知能)に奪われやすい仕事(なくなる仕事)のトップ10では、なんと100%に近い確率で、AIにとって代わられるとされています。とくに目立つのが事務員や単純作業などで、定型化しやすい業務ではAI化が進むと予想されています。

これらの分野では、すでにパソコンや機械の導入が進んでおり、技術の発展とともに自動化は進んできました。こうした動きが今後は加速し、最終的には仕事がなくなってしまうと予想されています。

逆に、AIに代替できない仕事(なくならない仕事)としては、医療関係や学校関係などが大半を占めています。複雑な社会的交流が必要な仕事、とくに教師や大学教授等もAIに代えることは難しいとされています。また、クリエーターなどの高い創造力が求められる仕事はAIには向かないと指摘されていました。

つまり、想像力やコミュニケーションが必要な仕事をAI(人口知能)は苦手とするといえるでしょう。

AIが代替可能「なくなる仕事」トップ10

  • 電車運転士 99.8%
  • 経理事務員 99.8%
  • 検針員 99.7%
  • 一般事務員 99.7%
  • 包装作業員 99.7%
  • 路線バス運転者 99.7%
  • 積卸作業員 99.7%
  • こん包工99.7%
  • レジ係99.7%
  • 製本作業員99.7%

AIが代替困難「なくならない仕事」トップ10

  • 精神科医 0.1%
  • 国際協力専門家 0.1%
  • 作業療法士 0.1%
  • 言語聴覚士 0.1%
  • 産業カウンセラー 0.2%
  • 外科医 0.2%
  • はり師・きゅう師 0.2%
  • 盲・ろう・養護学校教員 0.2%
  • メイクアップアーティスト 0.2%
  • 小児科医 0.2%

※数値は自動化可能な確率を示すものです。
引用:野村総合研究所「日本におけるコンピューター化と仕事の未来」

世界的に活発な交通分野の自動運転

この研究では、交通分野のAI導入を高い確率で予想しています。バス、電車、タクシーなどの運転は100%に近い確率で自動化できるとしています。

この点、自動運転は、すでに世界中で動きが活発になっており、アメリカの半導体メーカー「NVIDIA」のジェンスン・フアンCEOは「今後2年以内に自動運転の定着化が進む」と発言しています。

日本でも、前橋市と群馬大、NTTデータなどが共同でバスの試験運転を開始しており、2020年をめどにバスの自動運転導入を目指しています。

また、鉄道分野においては、イギリスでは試験的に自動運転が導入され、今後、本格的な自動運転の導入が検討されています。日本でもモノレールでは、すでに自動化が実施されています。

こういった動きからすると、10年後には無人のバスや電車というものが当たり前になるようにも思えます。

交通分野の自動化は進むか!?

本当に無人(AI)運転するバスや電車が10年後くらいには実現しているのでしょうか。この点については少し疑問があります。なぜなら、交通の仕事は人の生命を預かるという重大な責任も担うからです。つまり、命をAI(人工知能)に預けられるかという問題です。

すでに導入されているモノレールなどは人の生活する空間から隔離された上空等を通っています。このため運転中に想定外のトラブルが発生する可能性は低いといえます。すなわち想定外の事態が起こる可能性が低いため、安全性は100%確保でき、無人運転が実現しているといえます。

ですが電車やバスは人が生活する町の中を通っています。人の行動というのは予測不可能で何が起こるかわかりません。例えば、道路にはいろいろな物が落ちています。ダンボールや紙袋などは日常的にあり、それを人と見分けられずに停止すれば運行に相当の支障が生じるでしょう。逆に人を簡易な障害物と勘違いして跳ねてしまう危険もあります。道路という公共の場では何が起こるかわかりません。そういう事態にAIが柔軟に対応できるのかは疑問です。

この点、アメリカのアリゾナ州では今年の3月に試験運転していた自働走行の自動車が歩行者を死亡させるという事故が起こっています。事故の原因は明らかではありませんが、想定外の事態が生じたときAI(人口知能)が対処できるか、という点を考えさせられる事件であったといえます。

とくに、日本社会は安全に対する意識が非常に高いといえますので、一度なんらかの事故が国内で起こると世論はAI(人口知能)導入を見送る方向に動くでしょう。当然、自動車メーカー等の開発側もそういった事態を予想し、100%の安全を確保できるまでAI(人工知能)による自動運転を導入しないでしょう。だとすると、2015年に予測された運転業務の自動化は日本ではまだまだ先になりそうです。

人の命を預かる仕事は、これからも当分の間は人が果たすべき役割といえるでしょう。

事務作業はなくなる仕事!?

他方で、なくなる仕事の上位にランクインしていた事務員や単純作業員等については、今後AI(人口知能)により仕事を奪われる可能性は高いといえます。なぜなら、これらの仕事では、ある程度の機械的ミスは許容されるため、AIの導入に適した環境といえるからです。AI(人工知能)といえども数%のミスは生じます。これらのミスを完全になくすことは難しいでしょう。そうしたミスが許容される仕事にはAIを導入しやすいといえます。

例えば、パソコンでいうと、事務作業はパソコン導入により大きく削減できています。一方で、パソコンの不都合等による時間のロス、データの削除等(昔のパソコン)も生じていました。しかし、そういったロスよりも効率化による利益が大きいと判断され、パソコンの導入は進んできました。

とすると、今後もAIの開発が進むのと平行して積極的にAIが導入されていくといえるでしょう。

例えば、翻訳を考えると、10年ほど前には相当の知識と技術が必要な仕事でした。しかし、今は簡単な翻訳であればインターネットを介して何ヶ国語にも翻訳できるようになっています。さらに研究が進むと10年後くらいには翻訳業がなくなっているかもしれません。

AI時代に必要な仕事の能力とは

結局、研究結果が示すとおり、想像力やコミュニケーションを必要としない単純作業は、今後AI(人工知能)に奪われていく可能性は非常に高いといえます。

自分自身の仕事を一度振り返り、何も考えずにできる仕事があれば、それはAI(人工知能)に狙われている仕事と思ったほうがよいでしょう。

逆に、頭で考えて行動して結果を出す仕事は人間にしかできない仕事といえるでしょう。今後、AI(人口知能)時代に必要とされる人材になるためには、普段の仕事を振り返り、自ら考え想像している仕事は何か、そうした仕事を見つけ、その能力を高めていくことが求められるといえるでしょう。

物語でわかる AI時代の仕事図鑑

二宮憲志

二宮憲志

40代前半、滋賀県在住、男性、元公務員、元コンサルタント、現在はフリーランス。30代は仕事をしながら勉強に励み、政治学と経済学の学位を取得。日本社会の柔軟性のなさに日々疑問を感じながら、日本の政治と経済を考えています。「言葉で日本に振動を」、そんな気持ちで発言(政say)していきます。