TPP、EPA、FTPの違いとは?
TPPとは「Trans Pacific Partnership」の頭文字を取ったもので、日本語では「環太平洋戦略的経済連携協定」と呼ばれています。
FTAとは「Free Trade Agreement」の頭文字を取ったもので、日本語では「自由貿易協定」と訳されます。2カ国以上の国や地域が互いに関税や輸入割当などの貿易制限を撤廃したり削減し、モノやサービスの自由な貿易を促進することを目的とした協定です。
このFTAを基に、非関税分野である投資や知的財産のルール作りや、環境や労働などさまざまな分野で経済上の連携を強化する協定をEPA「Economic Partnership Agreement」(経済連携協定)といいます。TPPはこのEPAのひとつで、太平洋を囲む国々で取り交わす経済連携協定(環太平洋パートナーシップ協定)です。
オバマ時代はTPPを主導したアメリカ
TPPは2006年にシンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4ヶ国で発足し、日本は2013年に参加方針を表明後、2015年10月のアトランタ閣僚会合においてアメリカを含む12ヶ国間で大筋合意に達しました。
アメリカは2009年にオバマ大統領が参加を表明し、TPPを主導してきました。しかしオバマからトランプに大統領が代わるとこの方針が大きく変わります。2017年1月にトランプ大統領は「アメリカはTPP交渉から永久に離脱する」と記された大統領令に署名し、TPPからの脱退を世界に宣言したのです。
アメリカを除いた参加国は、シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、ベトナム、ペルー、メキシコ、マレーシア、カナダ、日本の11か国で、2017年11月に大筋合意に至っています。
しかし、まだ正式発効には至っておらず、調整は続けられています。また、アメリカの復帰やEUを離脱したイギリスが参加するという話もあります。
アメリカのいないTPPは日本にどんな影響を与えるのか
アメリカが離脱する前のTPP協定では、加盟12か国のGDP85%を占める6ヶ国以上の国内手続きが済めば発効することとなっていました。12ヶ国のうち、アメリカの占めるGDPの割合は実に60%でした。そのアメリカが離脱したわけですから、影響は少なくありません。
ピーターソン国際経済研究所は、アメリカ抜きのいわゆる「TPP11」は2030年までに、世界の実質所得を1470億ドル(2015年ドル換算)押し上げると試算しています。アメリカが参加すれば、その数字は4920億ドルに上ったと試算されており、TPPによる経済効果は3分の1にまで減ってしまったと言えます。
なかでも、アメリカとの貿易に多くの恩恵を受けている日本は、TPP参加国で最も多くの利益を失う可能性があります。
一方で、TPPの主導的役割を担っていたアメリカが抜けたことで、日本が強いリーダーシップを発揮し、多国間協定の策定において存在感を強めています。
TPPに参加しないアメリカは、日本とは二か国間で貿易交渉(FTA)を進めるという方針を表明しています。アメリカは日本とのFTA締結によって対日貿易赤字削減につなげたいと考えています。さらに農産物市場などの開放を求めてくることが予測され、アメリカファーストを掲げるトランプ政権との交渉は厳しいものとなりそうです。
しかし日本のリーダーシップなどによってTPPを早期発効することができれば、アメリカとのFTA交渉において交渉上の立場を強めることができます。
さらに、TPP参加に関心を示している、インドネシア、韓国、フィリピン、台湾、タイの5か国を引き入れることができれば、「TPP16」となり、2030年までの実質所得を4490億ドル押し上げるという試算があります。これはアメリカが参加した場合の経済規模に近く、日本経済にも好影響を与えることは間違いないでしょう。
現在、TPPの早期発効に向けてはカナダが難色を示しています。日本政府が国際社会で更なる存在感を示すことができるのか注目していきたいところです。