ブラック企業と言うものが社会問題化し、労働者を酷使するだけ酷使し、利益を得ることのみに執着する風潮の企業の存在が明らかになりつつあります。
それらに対抗するためにまずは労働者はどのように法律によって保護を受けているか、ブラック企業にはどう対応するか労働行政はどうしているのかについて見てみたいと思います。
守られている労働者の権利
まず、労働者は労働基準法で様々な事柄が保護されています。労働時間は1日8時間・1週40時間をこえての労働は禁止されています。
では何故残業が起こりえるかと言うと、労働基準法36条にある協定を結ぶことによって時間外労働を行わせることが出来るのです。
一般的に36協定と呼ばれています。この協定を結んでいない事業所が時間外労働を行わせると法律違反になります。
また、時間外・休日・深夜労働分の賃金は特に保護されており裁判所は労働者の請求により未払い分の賃金と共に同一額の付加金の支払いを命じることが出来ることになっています。
休憩も法律により与えることが決められています。ただし、6時間未満の労働時間であれば休憩を与えなくてもよいことになっています。
労働時間が6時間以上8時間未満では45分の休憩を、労働時間が8時間以上であれば60分の休憩を労働時間の途中に与えることとされています。
休憩時間は労働時間に算入されませんので無給でもかまいません。
賃金については、労働基準法では特に保護されています。賃金には5原則と言うものがあります。以下の5原則にのっとって支払わなければなりません。
- 1.通貨払いの原則
- 文字通り通貨貨幣で支払わなければなりません。現物支給は労働協約の締結がなければ許されません。
- 2.直接払いの原則
- 労働者に直接支払わなければならないことを意味しており、労働者の親や代理人に支払うことは禁止されていますが、本人の希望する銀行口座への振込みは許されています。
- 3.全額払いの原則
- 全額支払わなければなりませんが労働協約があるときは売店の代金等を控除することができますし、税金・社会保険料を控除することは許されます。
- 4.毎月1回以上払いの原則
- 5.一定期日払いの原則
- 4.毎月1回以上・5.一定期日を定めて賃金は支払われなければなりません。
例えば1月は10日に支払い2月は15日に賃金を支払うと言うことは労働者の生活の安定を損なうと言うことで法律により禁止されています。
以上のように国は労働者の権利を労働基準法を基本法として細かく規定し保護しています。
しかしながらブラック企業が現に存在することも確かです。
何故このようなことになるのでしょうか?
まずは法律に関する知識が使用者にないことが問題です。
労働基準法には罰則がついているものも多数あるために、法律違反を起こせば処罰される可能性があります。ル-ルを違反すればペナルティを課されると言うことを使用する側に周知徹底することが必須と思います。行政の積極的な姿勢が望まれます。
会社が法律違反。そのときの対応は。
労働者の権利を害されたとき具体的にはどうすればよいのでしょうか。
このような時のためにまずは自衛策として自分で勤務時間を把握することが有効です。
出来ることならより具体的に、何時に勤務を開始したか・何時に勤務を終了したか・何日に出勤したか、と言う記録をのこすことは未払い賃金トラブルにあったときに有効な証拠となりますので記録をつけることをお勧めします。
トラブルが起こったら、まず、労働行政を司る役所である労働基準監督署に相談することです。
このときにも証拠として労働時間を証明することが出来れば話はスム-ズになります。
国の機関であり労働基準法を所管する役所であるため相談の結果、事実関係を確認後、事業所に行政指導を行った後賃金が支払われることもありますし、利用するほうとしては費用がかからないので有効な手段であると思います。
2つ目は労働組合に相談すると言う手です。
労働組合とは憲法で保障されている団結権・団体行動権・団体交渉権を実地する機関です。
大企業にはたいてい組織されているのですが、現在は労働組合の組織率が減少しており、平成26年では17.5%と推定されています。
また、日本では企業ごとに労働組合が組織されていると言う特徴があるため労働組合自体がない会社も多数あります。
このような時は誰でも加入することが出来るユニオン・合同労組に加入して相談することが出来ます。全国からの加入が可能で月会費1000円と言うユニオンもありますので有効な手段になると思います。
その他には社会保険労務士や弁護士に相談すると言う方法があります。
このように労働者としての権利を害されたときはいくつかの対応策がありますので自分にあった対応が行えると思います。
また、先日、中国人技能実習生に賃金を適切に支払わず、労基署の調査も妨害したとして、岐阜労働基準監督署は22日、最低賃金法と労働基準法違反容疑で、容疑者を逮捕しました。
労働基準監督署が容疑者を逮捕するのは異例との記事がありましたが、昨今のブラック企業の問題を受けて行政も労働環境の適正化に対し積極的になってきているようです。
また、政治もブラック企業対策について動いているようで、青少年雇用促進法によりブラック企業の求人をハローワークで受け付けない制度を発足させるといった施策も行っています。
この施策に対してはその効果に対し疑問が出ているのも事実ですが、今後、不備のある点は改正しブラック企業の撲滅につながれば、労働者に対しても真面目に法令を遵守している企業に対しても、よい効果をもたらしてくれると思います。
政治・行政・企業が一丸となり対応するべき問題と認識する必要があると思います。
この夏の選挙から選挙権が18歳以上に引き下げられました。若年層にしてはブラック企業対策などの労働問題も選挙での1つのファクタ-になりそうです。