予想以上の速度で進行している日本の少子高齢化。このままでは労働力が急激に低下してしまい、経済への深刻な影響が出るのではないかと懸念されています。今回は、少子高齢化が本当に労働力の不足を招くのかを検証するとともに、難民の受け入れとの関連について考えてみます。
1.現在の労働力の現状
2014年の生産年齢人口(15~64歳の労働力になる人口)率は1950年代半ばとほぼ同じ水準となっており、このままでいけば2017~2018年には戦後すぐの1940年代後半に匹敵する状況になるという予測が立てられています。この状況は、少ない働き手が多くの人口を養うということを意味します。つまり、国全体の生産力が弱まり、景気が悪くなってしまうということです。
現在の景気状況や出生率の低下からみると、この予想は当たるでしょう。なぜなら、2014年の時点で65歳以上の高齢者の人口が0~14歳の年少人口の2倍の数値になっているからです。これはそのまま、働ける人口が減っているということを意味します。来年1年で出生率が爆発的に上がらない限り、この状況を改善することはできません。その可能性は極めて低いでしょう。
総合して、現状では、少子高齢化は労働力の減少を導いていると言わざるを得ません。
2.今後も労働力は低下するのか
少子高齢化を改善しない限り、労働力の低下は進行する一方なのでしょうか。
実は、そうとも言い切れないかも知れません。現代はイノベーション(技術革新)の時代と言われ、人間以外の労働力が重要な役割を果たしています。これから、その技術はどんどん進化していくことが予想されます。つまり、労働力の減少と共に、その労働力を補うことができる技術が進歩していく可能性があるのです。
もし、現状だけに合わせて労働力を増やすことのみに注力してしまうと、ある程度の労働力を技術がカバーできるようになったとき、労働力の余剰が起こってしまうかも知れないのです。そうなると、働きたくても働けない人が増えてしまい、数年前のような就職難やリストラの頻発に繋がるということも考えられます。
政策には、現状の問題を解決する力と共に、先を見通す目が必要です。現実問題の解決しかできない政策では、10年後20年後に同質の、もしくはそれ以上に解決が難しい問題が山積してしまう可能性があるのです。労働力の低下という現実問題を解決するために必要な政策が、数十年後の日本の首を絞めてしまう危険性を孕んでいるかも知れないという意識を持って、政治を監視することが重要です。
3.難民の受け入れは労働力の回復に繋がるのか
とはいえ、数年後の労働力をどうするのかという問題への打開策が必要であることに、変わりはありません。
そこで一つの案となっているのが、難民の受け入れです。日本は難民受け入れの文化自体が希薄なため、すぐにこれを解決策として採用することは難しいと言われていますが、働ける年代の人口が増えることは、労働力の回復に有効であることは間違いありません。
しかし、難民を受け入れ労働力に繋げるという策にも、問題はあります。
雇用する側も雇用される側も、言語や文化の違いという壁を乗り越えることができるのか。そもそも、難民を正規的に雇用する企業が十分にあるのか。その場合の政府からの支援は可能なのか。また、正規に雇用されなかった人々が、低賃金など不当な労働に従事させられるのではないか。
ブラック企業の問題などを解決できていない現行の政府に、これらの懸念を解消できるだけの力があるのか、という根源的な疑問にも繋がっていきます。
このまま少子高齢化が進めば、日本の労働人口は減少の一途を辿っていきます。出生率を上げるための政策も、女性や高齢者が労働力として活躍できるような環境も整っていないというのが現実です。
シリア情勢は緊迫し続け、テロが頻発する現在の世界情勢にあって、難民の受け入れ態勢をどうとるのかという問題は、先進国である日本にとって非常に重要なものになってきています。しかし、受け入れた難民の人々が「難民」という肩書を払拭することができるのか、一人の労働者として社会に受け入れられるのか、その土壌が今の日本にあるのかというと、大きく頷くことはできないでしょう。
灯台下暗しで、少子高齢化に歯止めをかける政策や、労働力を確保する方法は、わたしたちの足元にあるのかも知れません。安心して子供が産める社会、誰もが健全な労働ができる社会であれば、異国の人々と共に生活を営むことも可能かも知れません。