塵も積もればという実感と、SNSの時代。だから私は選挙に行く

多くの人が感じているであろう、投票に行くことの無力感。自分が票を投じたところで政治は変わらないし、自分が望む政策や法案はきっと後回し。大きな流れを前に、たかだか1票でなにが変わるのか…。
そんな思いを抱えつつ、私がせっせと投票へと足を運ぶのには、1票の力を信じる理由とSNSのおもしろさがあるからです。

負けるためにわざわざ投票所へ。それでも理念は捨てられない

序文からの重複になりますが、私はあらゆる議員選挙における投票に対して、無力感を持っています。
それは今現在の大きな流れに対して、私が票を投じる議員や政党の力が及ばないことへの無力感であり、自分が少数派に属することへの無力感です。
よって、期待を持って開票速報を見守ったこともありませんし、結果だけ見れば、今回もまた、投票しなくても同じことだったねという繰り返しです。
もはや好き好んで負けているようで、我ながら律儀なことだなあという思いもありますが、選挙というのは候補や政党の力を借りて、自分の理念を表明する最大の機会でもあるので、負けるとわかっていようが参加しないわけにはいきません。
そして、無力感を持ちつつも愚直に投票し続けるのにも根拠があります。
それは、あるとき参加した音楽フェスティバルがきっかけでした。

ひとつだけ余計にゴミを拾って帰る。キャンプ場で得た成功体験

私が参加したその音楽フェスティバルは、富士山がどーんと見える大きなキャンプ場を貸し切って行われる、わりあい規模が大きなものでした。
事前にウェブサイトなどを通じて主催者から各種注意事項のアナウンスがあり、そこにこんな一文があったのです。
「ゴミを持ち帰りをお願いします。そして、持参したゴミ袋を閉じる前に、周りに自分以外が出したゴミをひとつだけ拾って、持ち帰ってください」
これを読んだ時は、なるほどうまいこと言うもんだなあ、という程度にしか感じませんでしたし、実際に余計にゴミを拾ってからキャンプ場を後にするときにも、なんの感想もありませんでした。
それが巨大な実感を伴ったのは、翌年のことです。私が参加した音楽フェスが、また同じ場所で開催されることになったのですが、いろんな音楽フェスでのマナーが問題視されるなか、開催を許可された理由のひとつに、貸す前よりもキャンプ場がきれいになったからだ、と。これにはとんでもない衝撃を受けました。

やらないよりやったほうがいいだとか、ムダなことは決してない、などというのは、感覚的には誰にだってわかっているものですが、実感できないのが難点です。
ひとつだけゴミを持ち帰ることの実効性を私が想像できなかったように、投票することの効果とその実感を持つというのは、なかなか難しいことでしょう。よほどの接戦で勝った負けたという劇的な選挙でも体験しない限りは。
しかし、選挙速報に表示されている何千票、何万票という途方もない数字には確かに、あなたや私が入れた1票が含まれているのです。

取るに足りない個人の力が集まった結果、キャンプ場はきれいになり、国の舵取りが決まっていく。
そこには議会制民主主義の大切な基本が、確固として存在しているのです。その力を実感してしまった以上、投票しないわけにはいかないじゃないですか。

SNSの普及によって、政治家との距離がぐっと身近に

1票が持つ力を確信できたからといっても、政治家への不信感が拭いがたい、という問題が残ります。
これが疑念や言いがかりですめば良かったのですが、ちょっと議員さんたち一体何をやってんの?というニュースが次から次へと出てきますよね。
繰り返される議員の不祥事は、投票への無力感を大きく助長している要因のひとつでしょう。
しかしそれでも、選挙公報や選挙ポスター、わずかな時間しか放送されない政見放送だけを頼りに候補者を選んでいた時代と今とでは、有権者と候補者の距離に大きな違いがあります。

もはや首相ですらツイッターのアカウントを持ち、本人ではないにせよ局所局所でコメントを発信する時代なのですから、まず認知度を上げなければならない議員候補者がSNSを活用しないなんてことはあり得ません。
というかこの時代、SNSを活用していない候補者は、その時点で真摯な仕事への意欲に欠けているのではないでしょうか。
たいていの政党や意欲的な議員は、ツイッターやフェイスブックなどのSNSをうまく利用して、潮目に合ったコメントを発信しています。
自分の選挙区の議員が何をやっているのか、マメに報告を上げているのかどうか、そういうところを観察しているだけでも、参政への意識が変わっていくものだと思います。
勝ち馬に乗れていない私もまた、応援している政党がSNSで情報発信しているのを確認しては、もう少し付き合ってみるかなと思いを新たにしています。
一緒に戦ってくれそうな人たちだなと思えれば、応援のしがいもありますからね。

水野羊

水野羊

東京都在住の40代ワーキングウーマン。現在はデザイン会社に勤務しつつ、元マスコミの中の人だった同居人とともに、老後について憂う日々。だけどぜんぜん前向きです。

政治家が活用すべきインターネットツールは?(複数回答可)

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