宇宙ビジネスの新潮流

自民党政調に宇宙や海洋の政策立案を行う宇宙海洋開発特別委員会(河村建夫会長)、そしてそのもとに宇宙総合戦略小委員会が設置されていて事務局を預かっています。

その委員会では、これまで数次に亘り政府に対する提言を取り纏め、また必要予算の獲得に向けた運動をしたりして参りました。実は、今年、新しい2本の宇宙関連法制(民間と政府の役割分担を規制法としてまとめたもの)が成立しましたが、これもこの小委員会で議論をしたものです。

本日、改めて宇宙基本計画工程表が改定案が政府から示され、大勢の議員の参加の元、親会である特別委員会で了承されました。

最近の宇宙の動向ですが、特にアメリカと中国で大きな動きがあります。アメリカでは、ビッグデータ社会の到来を先取りする形で新しい民間ベンチャービジネスが立ち上がっていて、過去10年の総額と同じくらいの金額がたった一年で動いています。中国ではお金に物を言わせて急速に政府による宇宙開発が進んでいます。

アメリカの例だけ紹介すれば、電気自動車で有名なテスラモータのイーロン・マスクCEOがSpaceX(ロケット製造・打ち上げ・衛星製造)というベンチャー、Googleの共同創業者兼CEOであるラリー・ペイジがPlanetary Resources(小惑星探査)と、Google Lunar X Prize(月面探査)のベンチャーを創業、マイクロソフトの共同創業者であるポール・アレンもStratolaunch Systems創業やSpace Ship One(宇宙船)への出資、Amazon創業者のジェフ・ベゾスはBlue Origin(宇宙船)というベンチャーを創業、Virgin創業者兼会長であるリチャード・ブランソンもVirgin Galactic(宇宙旅行)のベンチャーを創業。これはあくまで有名な例だけですが、なぜこうしたビッグデータジャイアントがこういう領域に積極投資をしているかというと、決して趣味ではなく、宇宙がビッグデータビジネスに直結しているからに他なりません。

何に使うかというと、衛星から撮像したビッグデータと人口知能を使って、経営判断から統計収集まで、分野は小売り、農業、気象、金融などに活用しようとするもの。

日本の基本的考えは、安全保障・民生利活用・産業科学技術基盤の維持強化という3つの政策の柱を元に、それら3つの相乗効果により宇宙政策を推進していこうというものです。つまり、かなり米国に後れを取っていますが、宇宙ビジネス拡大の潮流を捕まえようというもの。

私が今一番注目しているのは、宇宙空間を利用したビジネスを如何に推進するかです。内閣府を中心に現在「宇宙産業ビジョン」という準戦略文章を策定しようとしていて、来年春には発表することになると思います。

党としてもしっかりと市場拡大を睨んで環境整備を行っていきたいと思います。

以下、幾つかの具体的プロジェクトを紹介したいと思います。

準天頂衛星
現在のGPSはアメリカの測位衛星を無料で使わせて頂いていますが(皆さんも使っています)、日本独自の高精度測位衛星を整備しようというもの。防災機能強化だけでなく新しいビジネスフロンティアの拡大につながると期待されているものです。
宇宙輸送システム
つまりロケットと射場です。ロケットは現在H2というタイプですが、各段に安価で信頼性の高いH3というロケットを開発しているのと(H32年初号機予定)、イプシロンという固体燃料ロケット(安保上非常に重要)でH3のサブロケットブースターと共用できるというすぐれものロケット、そして射場は現在打ち上げ能力がいっぱいいっぱいで、多くの衛星を打ち上げようとすると必要になってきます。これは宇宙エコシステムの大幅な予算削減と国際競争力の強化にとって必要なものですが、民間の活力を導入しようと言う動きがあります。
宇宙状況把握
SSAと呼ばれていますがアメリカと協調してその名の通り宇宙の状況監視を行うシステム構築を行おうとするものです。
海洋状況把握
MDAと呼ばれていますが、これは宇宙でなく海洋の状況把握。とりあえず海保で地上システムの構築を始めたところです。
情報収集衛星
昔、北朝鮮の不審船事件を契機に日本独自の監視衛星を上げようということになり、定期的に必要な衛星を打ち上げています。データ中継衛星の打ち上げは喫緊の課題です。

その他、即応型の小型衛星であるとか、静止気象衛星(H35年までにひまわり後継)、温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)、次期技術試験衛星、Xバンド防衛衛星通信網、X線天文衛星(H32年度)などが現在の計画です。ちなみに宇宙ステーションは2024年まで延長することで国際合意しましたし、それへの新型補給機HTV-Xも詳細設計に入っています。

出典:大野敬太郎オフィシャルサイト「オピニオン」【2016年12月9日公開】

コラム:先憂後楽

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