陛下の生前退位について

天皇陛下がお気持ちを表明されてから半月が経とうとしています。

第一に、そもそも皇室典範は、天皇が身体的精神的に天皇としての責務を果たせなくなった場合には摂政を置くことを想定しているわけで、そうすることで事足りるのではないか、という意見があります。天皇の事務的な行為は確かにそれで事足りますが、その他の象徴的行為、例えば震災の際に被災者に声をかけるとか、戦没者慰霊祭に参列されるとか、は、摂政では全くその意味合いが異なってきてしまいます。であるので、私はこの際、改正を議論すべきだと考えます。

第二に、陛下の意思に基づいて皇室のあり方が決まるのは、天皇の政治行為に関わるから憲法の趣旨に反するのではないかとの指摘があります。まず、あり方を変えられるのは国民の意思のみですから、前提が間違っています。

一方で、もし仮に、陛下のお言葉は影響力があまりに大きいので、国民の意思が歪められ、もって政治行為に繋がるという主張なら、少し慎重に考えなければなりません。ただ、憲法に示された天皇の国事行為の権能を援用すれば、今回の表明は内閣の助言と承認という内閣の責任において行っているわけで、勝手になんでも表明できるわけではないので、この点についても問題はないと考えます。

第三に、では生前退位を可能にする方法ですが、皇室典範を改正する方法と、その特別立法を制定する方法と、憲法改正をする方法が報じられています。私は何よりも重要なのが安定性と考えます。

過去の政権がずっと生前退位については否定的であったように、恣意的な退位は政治的安定性にも影響するため、生前退位の一般化を単純に認めることは困難です。

ならば今回の件は国民の圧倒的支持があるから特別法という議論もあるようですが、今後、同様な件があるたびに特別法にするのも安定性に欠ける。何故ならば、国会の過半数、つまり政権与党の意思で決まるからです。

であれば、皇室典範そのものを改正し、要件を国会の2/3として与野党の広い信任を得ることとして一般化した方がはるかに良いと考えます。

最後に憲法改正ですが、私はこれは違和感を感じます。まず生前退位の必要条件でない。さらに、憲法に書き込みとすれば、現在の皇室典範に書かれている同ルベルの皇室のあり方も憲法に書かないとバランスが悪い。憲法改正論議には馴染まないと考えます。

なお、少し余談ですが、そもそも皇室典範の即位の規定は明治憲法時代からの踏襲です。明治憲法では、天皇が政治を直接司っていたので、法体系上、皇室典範の改正は憲法の改正と同レベルの重要性をもつ案件でした。つまり、退位と即位が政治に直結していたので、その要件が極めて厳しく制定されていたとも考えることができます。そもそもこうした観点では、明治憲法と同レベルの規定でいいのかという議論もできなくはないように思います。

第四に、では具体的に生前退位を可能にしたとして、退位後の立場をどうするのか、など、より細かい議論が必要になります。

いずれにせよ、今後、国民的議論を経ながら、かつ、皇室の発展と安定、国家の安泰と繁栄を深く深く考えながら、議論していきたいと思います。

出典:大野敬太郎オフィシャルサイト「オピニオン」

大野敬太郎

大野敬太郎

衆議院議員

1968年11月1日生まれ。
坂出中央小・付属坂出中・丸亀高校・東京工大卒・同大院修士。
東京大学博士号取得。富士通研究所・カリフォルニア大バークレー校客員フェロー・国務大臣秘書官・東大産官学連携研究員・国会議員秘書などを経て、第46回総選挙で初当選。

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