まだ右派と左派、保守とリベラルという価値観で争われている日本の政治に対し、世界の政治は上の側と下の側、エスタブリッシュメントと反エスタブリッシュメントの戦いに進化しているという事を、アメリカなど各国の政治を例にとって説明しています。
日本で自民党がこれだけ強いのは、本当はおかしなことです。
皆さんご存知のように、2016年の参議院選挙は安倍総理率いる自民党の圧勝でした。前回の衆議院選挙も、自民党の圧勝でした。そんな選挙結果を見ても、あるいは各種マスコミの世論調査を見ても、政治の世界では自民党が圧倒的に強いというのは、誰もが否定できない事実です。
ですが、これは本当はおかしいのです。
なぜなら、今の日本国民の生活は、別によくなっているわけではありません。給料が多少上がっても物価がそれ以上上がっているので、実質賃金は減っていますし、地方に行けば疲弊した商店街が山ほどあります。
そんな状況なのに、与党である自民党が圧倒的に強いのは本当はおかしなことなのです。事実、世界を見ると、日本とはまったく別の政治潮流が流れています。その政治潮流の中身、それは「反エスタブリッシュメント」です。
世界に広がる反エスタブリッシュメントの動き
今の世界政治では、エスタブリッシュメント(支配階級、既得権益層という意味です)は蛇蝎の如く嫌われています。
それがよくわかるのが、2016年のアメリカ大統領選挙です。実積、能力、暴言などを言わないところ、政治家としてどこをとってみても、クリントン氏の方がトランプ氏より格上です。それなのに、選挙戦でクリントン氏はトランプ氏にてこずっています。
それはなぜか。それはクリントン氏がエスタブリッシュメントそのものだとアメリカ国民に思われているからです。アメリカ国民は、自分たちは苦しい生活を送っているのに、それを横目で見ながら大儲けしている(と思っている)エスタブリッシュメントに心底怒っています。
だから、今回の大統領選挙で民主党のエスタブリッシュメントであるクリントン氏は苦戦していますし、共和党のエスタブリッシュメントであるブッシュ氏は大敗したのです。
要するに、アメリカ国民は自分たちの生活の苦しさに無関心で、貧富の差をどんどん広げようとするエスタブリッシュメントが大嫌いなのです。この反エスタブリッシュメントの動きは、アメリカだけでなくヨーロッパでも盛んになってきています。
では、我が日本ではどうなっているでしょうか。
右派と左派との争いから、下の側と上の側の争いへ
日本では、反エスタブリッシュメントの動きはまったくありません。昔ながらの右派(自民党)と左派(民進党や共産党)の争いはありますが、世界の政治潮流とも言える、下と上の争いというのはまったく起こっていません。
この、下と上の争いと言うのはどういう事かと言いますと、今までの既得権益や秩序に窒息しそうになっている側の人間が、それらを、既得権益にのっかっている人間ごと、何もかも引っくり返そうとする争いのことです。
アメリカ大統領選挙で言うと、下の側に立っている人間がトランプ氏にサンダース氏、上の側に立っている人間が、クリントン氏、ブッシュ氏、ルビオ氏となります。
ここで気がつかれた方もいるでしょうが、この下と上の争いというのに党派性はありません。なので、下の側に共和党と民主党の人間がいますし、同様に上の側にも共和党と民主党の人間がいます。しかし、日本はまだそこまでいっていません。相変わらず右派と左派、保守とリベラルの争いなのです。
日本の政治も、そろそろ次世代の政治に進化するべきでしょう。
世界の政治では、右派と左派の争いは既に終わりつつあります。だからフランスでは、国民運動連合(共和党)と社会党が上の側の政党として、下の側の政党である国民戦線を共同で押さえ込んでいます。イギリスの国民投票でも、保守党と労働党が上の側と下の側に分かれました。
それなのに、まだ日本の政党は右派と左派、改憲派と護憲派という1世代前の価値で争っています。そういう価値観はソ連崩壊と冷戦の終了で終わりました。これからは右派と左派の戦いではなく、上の側と下の側との戦いになります。
そろそろ日本も世界の潮流を見習って、政治思想を1世代前の価値観から、今の価値観に進化させるべきだと私は考えますが、皆さんはどうお考えになりますでしょうか。