2017年12月6日、自民公明両党は、2011年に廃止された地方議員年金の復活を図る法改正を検討することで一致しました。
「地方議員のなり手が不足している」という主な意見に加えて「議員を辞めてからホームレスや生活保護受給者になる人もいる。年金は必要」などの主張もあります。何かと「お手盛り」「国民生活のことも考えよ」という批判を浴びる議員年金に関する実態を考えていきます。
地方議員年金とは
1961年の第38回通常国会にて、地方議会議員互助年金法が、超党派で議員提出議案として提出され、衆参両院で可決されました。これは、公費負担のない互助年金制度で任意加入、というものでした。翌年、地方公務員等共済組合法が成立し、地方議会議員互助年金法はこれに組み込まれる形で廃止されました。この統合により、任意加入から強制加入へ、そして公費負担の規定が設けられたのです。
その後、国民負担による地方議員の待遇は向上し、それは議員年金の社会保障化を意味し、40年以上大きな議論とならないまま放置されました。主たるものは「退職年金」と呼ばれるもので、地方議会議員が在職12年以上で退職(ただし65歳以上であることが条件)したときに支払われました。
元・地方議員へ支払われる退職年金に関しては、積立金の枯渇・低下する運用利回り・12年未満の議員生活では無年金という不公平な法律としての不備・そして多額の税金投入による国民からの強まる批判によって、制度そのものの是非が問われ、時代を追うごとに行き詰まってきました。
地方議会議員年金廃止
地方に先だって国会議員互助年金は、2006年、小泉内閣のときに廃止法が成立。そして地方議会議員年金も民主党政権時代の2011年に廃止されます。悪しき議員特権ともいわれた制度は消滅し、財政面での過剰な負担や国民の不満も一緒に消えたかと思われました。
地方議員年金復活の兆し
前述したように、自民公明両党が、地方議会議員年金を復活させるための検討を始めました。2019年の統一地方選に向けて法整備を図っていくようです。それに対して、多くの国民はもちろん、一部自治体でも「財政において負担が増える」と反発する動きがあります。
何事も外国と比べればよいというわけではありませんが、欧米などの先進諸国では、地方議員は基本的に名誉職であり無給です。つまり有給で、かつ年金も必要と訴える日本における地方議員は「職業」として、もっと言えば「生活のために」活動している人がかなり多いということになります。
地方議員が厚生年金加入? これからの議員の老後
現在、専業の地方議員は、国民年金しか加入できません。そこで自民党が立ち上げたプロジェクトチームによって、厚生年金保険法などの改正をして地方議員を地方自治体職員とみなし、厚生年金への加入を認める新制度案が検討されています。さながら「政治家のサラリーマン化」とも見られる案で意見は分かれるところでしょう。
しかし地方では特に、議員のなり手が不足しているという事実は見逃せません。先行き不透明な社会を生きるうえで、できる限り経済的に安定した老後を長く続けたい、という考えは一般国民も政治家・政治家志望者も同じだと思います。
政治家ならば信念を持って私益を顧みず公益に尽くさんがために邁進することを最も重視してほしいところですが、それも安定した経済基盤があってこそ。政治家も生活を保障されるべき国民です。しかし当然、議員年金復活あるいは議員の厚生年金加入などには、一般国民の強い反発があるでしょう。行き過ぎた特権はもちろん控えるべきです。政治家はギリギリの年金で生活している国民、あるいは生活できないところまできている国民の立場と向き合う必要があります。議員と一般国民との間で、お互いにギリギリ納得できるラインを広く深く煮詰め、議論は尽くされるべきでしょう。