民進党の細野豪志元環境相が離党の意向を表明しました。細野氏は党内で孤立を深めていただけに、今のところ同調する動きは見られませんが、若手を中心に複数の議員が離党を模索しているもようです。民進党は東京都議選で公認した現職候補18人が離党ドミノで7人に減りました。細野氏の動きが国政での離党ドミノ再現につながる可能性は否定できません。
細野氏は都民ファーストの会と連携を模索か?
細野氏は2000年の衆議院議員選挙以来、旧静岡7区と静岡5区で6回連続当選を重ねてきました。旧民主党では、菅内閣、野田内閣で原子力発電所事故担当相、環境相を歴任、党幹事長も務めています。2014年には党内グループの自誓会を立ち上げ、2015年の旧民主党代表選に立候補しました。2016年の民進党代表選後は蓮舫氏の代表就任に伴い、代表代行として執行部に入りました。
知名度は十分です。経歴を見る限り、党内実力者の1人で、将来の党首候補と考えてもおかしくありません。
そんな細野氏が離党後は新党を結成し、野党再編を主導するとしています。東京都選出の国会議員らと水面下で協議し、小池百合子東京都知事が率いる「都民ファーストの会」との連携を模索しているとの情報も浮上しています。小池知事自身は当面、都政に専念するとみられますが、都民ファーストの会は国政への足掛かりを十分に持たないだけに、現時点で鞍替えすれば重要なポジションに座れる可能性があるといえるでしょう。
支持率が低迷したままの民進党に見切りをつけ、都民ファーストの会へ転身した東京都議と同じ思惑が透けて見えると受け止める人は少なくないのです。
有力議員の離脱は民進党に大打撃の可能性
ただ、自派閥ともいえる自誓会から今のところ、同調する動きが見えません。自誓会の会合で細野氏が離党の意向を示したことに対し、突き放した意見が出たとも報じられています。
これはここ数年の細野氏の動きと関係しているようです。細野氏は前原誠司元外相と盟友関係にあり、2015年の旧民主党代表選では前原氏の支援を受けました。しかし、2016年の民進党代表選では、立候補した前原氏を応援せず、蓮舫氏支持に回っています。蓮舫執行部で代表代行を務めながらも、4月になって唐突に執行部が憲法改正に消極的だとして辞任しました。蓮舫体制での党勢回復が困難だとして新たな道を模索し始めたという見方もできるでしょう。
盟友のもとを簡単に離れ、苦境に立つ執行部を見捨てたように見える点を、身勝手と批判する声が党内に出ています。それでも、細野氏が有力議員であることに変わりありません。民進党に与える衝撃は決して小さくないでしょう。
選挙基盤の弱い若手議員も離党を模索
民進党は4月に長島昭久衆院議員、7月に藤末健三参院議員が離党届を提出しました。蓮舫氏に代わる新代表選が21日に告示され、前原氏と枝野幸男元経済産業相が立候補を予定していますが、若手議員の中には民進党の看板で戦えないとし、選挙基盤の弱い議員を中心に離党を模索する動きが出ています。
安倍晋三首相は森友、加計問題で国民の批判を浴び、内閣支持率を大幅に下げました。民進党にとって支持回復の絶好の機会でしたが、内部の不協和音と混迷ばかりが表面化し、支持率が低迷したままです。旧民主党時代の悪いイメージもぬぐえず、政府批判票の受け皿になれずにいるのです。
前原、枝野の両氏に対する期待感は、若手議員の間で蓮舫氏が登場したころほど盛り上がっていません。今のところ、細野氏に同調者がいなくても、細野氏の離党をきっかけに再び離党ドミノが起き、民進党分裂の引き金になる可能性は十分にあるようです。
安倍内閣の失敗に乗ぜず、事実上の解党の危機に
安倍内閣に対する批判が高まり、内閣支持率が低下する中、急激に拡大しているのが行き場を失った無党派層です。自民党には不満があるが、民進党にも期待できないという思いが、国民の間で広がっているわけです。共産党や日本維新の会など他の野党の支持率も伸びていません。
反自民、非民進の受け皿になりそうなのは、やはり都民ファーストの会でしょう。小池知事の側近ともいえる若狭勝衆院議員が国政選挙をにらみ、政治団体「日本ファーストの会」を設立したことが分かりました。候補者集めの政治塾を開き、小池知事が講師を務める計画も明らかになっています。都民ファーストの会は小池知事の個人的な人気に依存している面が大きく、無党派層の受け皿に育ったといいきれない部分もありますが、都議選の結果を見る限り、無党派層の期待を集めていることは間違いないでしょう。
もし、民進党に再び離党ドミノが起き、野党が再編されるとすれば、中心にいるのは小池知事になる可能性が現時点では最も高そうです。そのとき、民進党は事実上の解党ともいえる大打撃を受け、かつての社民党と同じ衰退の道をたどるかもしれません。