豊洲新市場や東京オリンピックなどの様々な問題に取り組んでいる小池百合子東京都知事。実は、議員の活動をしながら母親の介護と看取りを行った経験があるそうです。政府では「一億総活躍社会」実現のための対策の一つとして「介護離職ゼロ」を掲げており、「介護と仕事の両立」を推進していますが、多くの課題があります。
末期がんの母親を自宅で介護した小池百合子都知事
小池都知事は3年前、末期の肺がんになった母親を自宅で介護することを決意。在宅医療や介護保険などを活用して、介護の環境を整えました。当時のことをインタビューで以下のように語っています。
「私も3年前、肺がんの母を自宅で看取りました。母が『私の好きなすき焼きは病院では出てこない』と言ったからです。母は、大好きだったタバコを一服して、庭のバラを見ながら旅立ちました。これからは、私のように自宅で最期の看取りをする人が増えてくるでしょう。そういった人たちをバックアップするためにも、在宅ケアシステム、地域包括ケアシステムを整えていく必要があります」
引用元:PRESIDENT Online
小池都知事の場合、母親は自宅に戻ってから12日後に亡くなったとのこと。実際に自宅で介護した期間は短かったものの、こうした経験を持つ政治家が今後増えることで、今後介護と仕事の両立への取り組みが進むのを期待したいところです。
介護と仕事の両立への取り組み状況は
小池都知事のように短期間でうまく介護を乗り切れた事例もありますが、介護のために仕事を続けられない方も多いのが現状です。介護を理由に離職・または転職した人は、年間約10万人と言われています(総務省の「平成24年就業構造基本調査」より)。
政府では「一億総活躍社会」実現のための緊急対策として「介護離職ゼロ」を掲げており、介護のために仕事を辞めないような取り組みを行っています。その中でもサラリーマンの働き方に影響するのが、「育児・介護休業法」の改正です(平成29年1月1日より施行予定)。
「育児・介護休業法」改正点のポイントは、介護のための休暇が取りやすくなることです。最大93日までの「介護休業」は改正により、分割して取得できるようになります。また1日単位だった「介護休暇」は半日単位でも取得できるようになります。また「介護のための所定外労働の制限」が追加され、対象となる家族1人につき介護の必要がなくなるまで残業が免除されるという制度が新設されます。
とはいえ、こうした制度の利用を促進するためには、介護のために会社を休める環境づくりも必要です。政府では平成28年に事業主向けの「介護離職防止支援助成金 」を創設しましたが、今後もこうした企業に対する取り組みも課題の一つと言えます。
介護保険制度は負担増・サービス縮小の可能性も
その一方で、残念ながら介護保険制度では財源不足のために、負担増やサービスの縮小も検討されています。例えば要介護度が低い人向けの「生活支援サービス」(掃除や洗濯などの家事をサポートするサービス)を介護保険適用の対象外とし、全額自己負担になるという案も浮上しています。もし全額自己負担が実現した場合、費用面からサービスの利用を控えてしまい、仕事を持つ家族が代わりにやらなければならないという事態になるかもしれません。
なお、そもそも現在でも介護保険における生活支援サービスでは、同居の家族がいる場合は利用できないケースがあります(自治体により方針が異なる)。
自治体によって介護サービスに差がある
自治体によって利用できるサービスに差があるというのも、課題のひとつではないでしょうか。多くの自治体では介護保険とは別に独自でサービスを提供していますが、自治体によって内容は異なります。例えば東京都杉並区では家族向けの取り組みが進んでおり、介護する家族が休めるよう「ほっと一息、介護ヘルプ」というサービスにて、生活支援利用券の交付を行っています。ただ、こうした介護を担う家族向けにサービスを行っている自治体は非常に少ないのが現状です。
介護と仕事の両立はこのように多くの課題があり、国や自治体の政策もめまぐるしく変わっています。介護は近い将来、誰もが直面する問題。できるだけ情報を収集しておくことをおすすめします。