公職選挙法違反に注意?!演説中にして良いことと悪いこと

  •  2019年04月1日公開

選挙運動中には演説が欠かせないものですが、同じ演説でも政治活動中の演説と選挙運動中では異なる部分があります。公職選挙法違反にならないように演説中にして良いことと悪いことをしっかりと把握しておく必要があります。そこで、基本的な演説に関するルールを紹介していきますので参考にしてみてください。

「私に投票してください!」はOK? 選挙運動と政治活動

選挙運動中における演説と選挙運動期間外の演説ではルールが異なります。

まず、選挙運動中の演説というのは、選挙運動のひとつです。選挙運動は、特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的に選挙人(有権者)に働きかけることで、選挙の公示日から投票日の前日までの選挙運動期間中のみ認められる行為になります。

演説中に候補者が「私に投票をお願いします!」と述べたり、応援してくれる弁士が「〇〇候補へ清き一票を!」と、特定の候補者への投票を有権者に訴える行為は選挙運動にあたります。

もし、選挙運動期間以外に選挙運動を行ってしまうと事前運動として公職選挙法違反になることもあります。政治活動は政治上の目的で行われる選挙運動になる行為を除いたものです。

つまり政治活動での演説では有権者に対して投票を呼び掛けることはできません。

選挙運動期間になると、街中で拡声器を使用した街頭演説などをよく見ますが、個人演説会場内以外での拡声器の使用は、午前8時から午後8時までの決められた時間帯以外は行うことができません。

拡声器を使用した街頭演説などを行う際に、音量の規制などは特に定められていません。しかし、学校や病院、療養施設などの近くでは静穏を乱さないよう音量にも気を使って演説などを行う必要があります。

選挙運動以外の政治活動に関しては、各自治体の条例によって音量や禁止時間などが定められていますので、その規制の範囲内で行う必要があります。

「たすき」や「のぼり旗」は違反になる?

街頭演説で「たすき」をかけたり「のぼり旗」を立てている人を見たことがあるかもしれません。実は、厳密にいうと選挙違反に当たる可能性があります。

公職の候補者又は公職の候補者となろうとする者の氏名や氏名が類推されるような事項が表示された「たすき」や「のぼり旗」を掲示することは禁止されています。他にもプラカードや腕章なども禁止で、違反した場合には公職選挙法第243条の罰則規定により二年以下の禁錮又は五十万円以下の罰金刑となります。

ただし、選挙期間中に一部認められているものもあります。タスキに関しては選挙運動期間中に候補者自らが使用するものであれば公選法違反とはなりません。また、政治活動のためにする演説会、講演会などの集会会場においてその演説会等の開催中に使用されるのぼり旗などは大丈夫なのです。

ですから実際の街頭演説においては、街頭を集会の会場とみなし、演説中は使用してもよいという解釈で、のぼり旗を立てているのです。このあたりは、グレーゾーンになるので、心配ならば事前に選挙管理委員会や警察などに確認しておくとよいでしょう。

選挙中は「標旗」がなければ演説できない!

選挙に関するテレビ番組などを見た時に「選挙の7つ道具」などという言葉を聞いたことがあるという人は多いのではないでしょうか。この選挙の7つ道具というのは、選挙管理委員会が無料交付してくれるもので非常に重要なものです。

  • 「選挙事務所の標札」
  • 「選挙運動用自動車・船舶表示板」
  • 「選挙運動用拡声器表示板」
  • 「自動車・船舶乗車船用腕章」
  • 「街頭演説用腕章」
  • 「街頭演説用標旗」
  • 「個人演説会用立札」

選挙期間中の演説では、演説会場に「街頭演説用標旗」を掲げるというルールがあります。標旗が無いにもかかわらず演説を行った場合には公選法違反となります。

街頭演説に必要な標旗に関する規定ですが、立候補届のあったときに交付するもので、演説中は聴衆の見やすいように常に掲げておかなければならないと定められています。もし標旗を活動中に破損してしまったり、紛失してしまった場合には選挙管理委員会に紛失証明書か破損した標旗を添えた上で文書によって再交付の申請を行わなければなりません。

また、標旗は選挙期日後すぐに返却しなければならないとされています。街頭演説を行う際は標旗に加え、街頭演説で運動する際に着用する腕章、街頭演説で掲げる立札も必要です。

選挙中の集会「個人演説会」とは?

演説会には大きく分けて立会・街頭・個人の3種類があります。

このうち立会演説会というのは、学校の生徒会選挙などで行われるように候補者が同じ時間に同じ会場に一堂に会して行うもので、かつては国政選挙、都道府県知事選挙では公営立会演説会の実施が義務付けられていました。しかし、1983年の公職選挙法の改正により廃止され、地方議員などの選挙では条例で定められ、公営での開催は任意となっています。

したがって、現在の主な演説会というのは駅前や繁華街などで行われる街頭演説会と個人演説会の2種類となります。

街頭演説会は街中で行われるので、選挙期間中は有権者が意識しなくても耳にすることがあります。一方で個人演説会は有権者が参加の意思を持って参加するものなのです。

個人演説会は、立候補者個人が貸会議室や体育館、公園などを借りて行う演説会になります。街頭演説会の場合は拡声器の使用が可能な時間が限られていますが、個人演説会の場合、屋内での開催であれば拡声器規制の影響を受けないため夜に開催されることが多くなっています。

立会演説会は禁止されていますが、個人演説会を合同で行うことによって立会演説会のようにすることもあります。ただし、合同演説会は候補者および所属政党・政治団体・確認団体が主催でないと公選法違反となるので注意が必要です。

候補者のみならず、支援者にもルールの徹底を

選挙というのは公正かつクリーンに行うのが望ましく、そのために公職選挙法などが定められています。候補者が公職選挙法を遵守するのはもちろんですが、支援者にも公職選挙法をしっかりと守ってもらうというのは候補者の役割です。

支援者にとっては良かれと思ってやったことでも公職選挙法違反になってしまうことはありますし、内容によっては連座制といって選挙違反に直接関与していない候補者にも不利益が与えられる可能性もあるのです。

演説後におにぎりを配ったことで事情聴取されたケースもあります。お茶やお菓子は良いけどそれ以外の飲食物は駄目など細かく決められているので、どこまでがOKなのか候補者と支援者でしっかり共通認識を持っておく必要があります。

思わぬ落とし穴に落ちないためにも立候補者はもちろん、支援者においてもルールを徹底して選挙運動に臨むことが大切です。