政務活動費はフリーハンドの資金ではない!使途基準を正しく理解する

  •  2019年02月1日公開
  •  2019年04月1日更新

政務活動費は地方議会議員による、調査や研究などの活動に対して支給される経費です。これに対して文書通信交通滞在費がありますが、こちらは国会議員に対して支給されているもので、その使途は公文書の送付などの他、公的な通信に使われる費用となります。このように色々な名目で公費の支出がありますので、それぞれの特徴や違いを押さえていきましょう。

政務活動費は税金から支出されている

議員は給料となる議員報酬以外にも、複数の手当を支給されています。国会議員に対して支給されるものは、文書通信交通滞在費の他にも、立法に関しての調査研究に支払われる立法事務費や、研究・審査を行うために議員が出向いた時には派遣のための旅費も支払われます。地方議会議員に対して支給されるのは政務活動費の他、交通費などが支払われる費用弁償と言う制度もあるようです。今回は、政務活動費について詳しく見ていきましょう。

政務活動費は従来は政務調査費と呼ばれるものでしたが、2012年の地方自治法改正によって、使途が拡大されて現在の形となりました。地方公共団体の議員が活動するために支出されるものですので、当然ですが公費を財源としています。一般市民による納税などの経済的負担によって賄われているわけですので、これを軽んじて浪費するようでは有権者の支持は得られないでしょう。

政務活動費の使途は限定されており、議員個人の利益のために行使することは許されるものではありません。地方住民から託されたお金であると言うことは、くれぐれも忘れないように心がけることが大切と言えます。

住民にとって税金と言うものは、自身の娯楽費や生活資金などを削って納付するものです。法律で納税義務が課せられているから払って当然、と言う認識もあるかも知れませんが、理由はどうであれ、その目的は住民による行政への投資とも言えます。このような資金を財源としているのが政務活動費となりますので、正しい用途で地方政治に役立てることを念頭におき、安易な誘惑に負けないよう気をつけたいものです。

政務活動費は、本来何のための費用かを考える

政務活動費という制度の根拠となっているのが地方自治法です。地方自治法の規定では、議員が行う調査や研究、その他の活動に役立てるための経費を、支出することができるとされています。

ここで「その他の活動」が何を意味するかについてですが、「調査や研究」と例示されているため、「その他の活動なら、何でも使える」という解釈は成り立たないと理解して良いでしょう。範囲としては「調査や研究」と同様に、地方自治に資する事柄に限定されると考えられるはずです。

また、地方自治法では「支出することができる」と規定していますので、必ずしも、地方公共団体が義務的に政務活動費を支払っているわけではありません。あくまでも必要に応じて行使される資金であると言う認識が必要となります。

何とか満額の政務活動費を支給してもらうために、不適切な会計を行っていた議員もあるようですが、この場合には刑事告訴が待っていますし、議員職は続けられません。

議員の研究や調査などの活動を通して、地方自治ひいては住民の利益のために支出されるのが政務活動費です。この本来の目的を忘れずに、正しく役立てられるような使い方を考えていくことが大切でしょう。

自治体によって多少異なる金額や使途基準

政務活動費の具体的な制度は条例で設置するように、地方自治法によって定められています。各都道府県や市町村にある程度の裁量が与えられた結果、自治体によって支給金額や使途基準が異なっているため、議員となった場合には、各自治体の制度をしっかりと理解することが欠かせません。支払われる時期や交付対象にも違いがあるようです。

例えば、日本を代表する都市である東京都では、一人あたり50万円の政務活動費が支出されていました。広報活動やスタッフに対する人件費などが支給対象とされています。一方、会合への参加については政務活動費の支給が無くなったそうで、各種集会は自費参加となったようです。政治活動では会合や集会への参加も重要な意味を持ちますが、住民からすると年末年始の集まりなどに、政務活動費が支出されるのは好ましいイメージは持ちにくいでしょう。

沖縄県では条例によって、議員一人あたりの政務活動費は150万円と規定されています。使途に関しても微妙な違いがあり、沖縄県の方では住民相談についても明記されていますが、東京都の方では記されていません。

他にも、自治体によって色々な部分が異なっていますので、議員としては、自身の自治体の制度をしっかりと把握することが好ましいと言えます。

多くの自治体で内訳はネットで公開される!

政務活動費については、関西地方のさる県議会議員による詐取事件は記憶に残っている方も多いはずです。この事件では議員の著しく背信的な資金濫用が明らかとなった他、真相追求のために行われた記者会見においての印象深いふるまいもあり、政務活動費に対する住民の不信感が高まる結果となってしまいました。これに続く形で、不正利用の事件が次々と報道されて問題は肥大化し、色々な自治体で監査請求がなされる事態に発展しています。

この流れが地方政治に与えた影響は小さくありませんでした。政務活動費は正しく使われたならば、地方自治に有益なものです。この活用が監査や差し止め請求などで滞るようであれば、行政サービスの低下にも繋がりかねません。よって、地方公共団体は住民の理解をえるためにも、政務活動費を公開する制度を導入しているケースが増えてきました。

現在では、多くの自治体で、議員がどのような目的でいくら使ったのか、ネットでも見られるようになっています。

公開制度は逆に言えば、議員としてどのような仕事をしたのかを、世間にアピールするためにも役立つはずです。誰に見られても問題がないのはもちろん、住民にとって喜ばしい用途での活用が期待されます。

正しく使えば議員活動する上での大きな手助けに

政務活動費は議員の活動をサポートするための大切な資金です。研究も調査も自費と言うのでは、真面目に仕事をする議員ほど金策に奔走するという結果になりかねません。これでは地方自治における議員活動を減退させる結果になってしまうでしょう。

議員としては資金をしっかりと有効活用していくことで、自治体における公共の利益にも繋がりますし、議員としての評価を高める効果も期待できます。特に自治体にとっての重要なテーマであれば、議員がしっかりと役目を果たすことが必要で、かつ、地方政治への信頼を得るためにも欠かせないものです。

日本は現在、極端なスピードで進む高齢化や人口減少の他にも、色々な問題を抱えています。その中には地方自治体が率先して解決を目指したいテーマもあるはずです。

例えば、現在は国によって空家等対策に関する法律が制定されていますが、この法律に先駆けて空き家バンクの制度を確立したのは地方自治体でした。このように、地方自治の側から国の抱える問題にアプローチすることも不可能ではありませんし、そのような在り方は世間にとっても好ましいものです。

地方自治や地方分権を加速させるためにも、政務活動費の使途については、もっとも有効な方法を考える必要があるでしょう。