インターネットでの選挙運動ができるようになってからは、動画でパーソナリティや政策をアピールする政治家が増えています。このようなツールのメリットを活用するには、限られた時間で視聴者の心をキャッチできる内容や構成を考えることが必要です。ここでは、注目される政治家の動画を取り上げて、最適な長さや制作する際のポイントなどをご紹介します。
ユーチューバーも?!動画を活用する政治家
政治家が動画を活用するケースは、国内外を問わず増えています。インターネットを使った選挙運動が盛んなアメリカでは、YouTubeやTwitter、Facebookなどを利用して、自分のパーソナリティや政策をアピールする政治家が多く見られます。
日本でも、政治家がYouTubeデビューを果たすケースは少なくありません。例えば、財務官僚から国会議員に転身した国民民主党の玉木雄一郎衆議院議員などは、2018年夏に「永田町のユーチューバーになりたい」とYouTubeチャンネル「たまきチャンネル」を開設しました。しかし、動画の更新頻度やチャンネル登録数などを考えると、玉木議員がユーチューバーかと言われれば、微妙なところではあります。
昨年の自民党総裁選では、各都道府県の党員へ向けたメッセージ動画を作成するなどして話題になった、石破茂衆議院議員も動画を積極的に活用している政治家のひとりです。
現職政治家でユーチューバーといえば、「NHKから国民を守る党」の立花孝志葛飾区議会議員が有名です。2018年のネトウヨ春のBAN祭りのあおりでYouTubeアカウントを凍結されたこともありますが、現在も積極的に動画を配信しています。
ほかにも、元横浜市長・元衆議院議員の中田宏も「中田宏チャンネル-中チャン-」を開設しています。彼の場合は、政治家を辞めてから本格的なユーチューバーに転身したので、厳密には政治家ユーチューバーとは言えないかもしれません。
ユーチューバーといわれるほど、動画を更新しなくても、動画を使って情報発信をすると、より多くの人に自分の魅力や政策を知ってもらえます。YouTubeなどの動画は、インターネット環境があるところであればどこでも視聴ができるという特徴があります。こういったツールを利用すれば、一度に多くの人にアピールができるわけです。従来の選挙運動は街頭演説などが中心だったため、広報活動ができる範囲もある程度限られていました。動画は、このようなデメリットを解消するのにも役立ちます。
まずは何のために動画を作るのか考えよう!
自分の情報を発信する動画は、政治家にとって政治活動や選挙運動に役立つツールの1つです。ただ、選挙運動のみを目的にして動画を作った場合、余り効果が得られないケースもあります。
例えば、選挙の直前に自分をアピールする動画を慌てて公開しても、アクセスも伸びず期待していたほど票が獲得できません。YouTubeなどで人気を集めている政治家は、概して動画を政治活動のツールとしても利用しています。選挙の有る無しにかかわらず、日頃から地道に自分の政策や意見などをアピールしているため、視聴者の注目を浴びる機会が自然に増えてくるわけです。
YouTubeなどで自己PRをする際には、何のために動画を作るのかを明確にしてから内容や構成を考えていくのが成功の秘訣と言えます。有権者に自身の考えや政策を理解してもらい、支持者してもらうためには、選挙運動のみではなく、政治活動を目的にした動画を制作したほうがよいでしょう。
政治家にとって動画は、どのような政治を目指していくのか、今起こっている問題についての自身のスタンスを、視聴者に向けて発信するツールとも言えるでしょう。
自分自身や政策を知ってもらうための動画の場合
自分のパーソナリティや政策の概要について知ってもらいたい場合の動画は、余り長くないほうが視聴してもらいやすくなります。このような動画に最適な長さは、だいたい2~3分程度、長くても5分程度といったところです。10分を超える動画を作成しても、よほど飽きさせない内容だったり、面白い内容でないと、最後まで視聴してくれるユーザーは少ないでしょう。
自己紹介系、理念・政策紹介系の動画は、名前などを見て興味を持った視聴者が短時間で理解できるような内容にしたほうが効果的です。政策ごとに細かく動画を分けるなど、視聴時間が短い方が効果的です。テレビCMのように15秒から30秒の動画を数多く作るというやり方もおすすめです。長くしたからといって効果がアップするとは限らないのが、動画の難しいところです。
政策や時事問題などを細かく解説する動画の場合
政治家が時事問題などを取り上げて解説をしていく動画は、自己紹介の動画よりもいくぶん時間が長くなるケースが多いです。このような動画では、問題をある程度掘り下げて論じる必要がでてくるため、余り時間が短いと十分に自分のスタンスをアピールできません。
とはいえ、こちらも短くまとめたほうが、多くの方に見てもらえます。先に紹介した中田宏チャンネルなどでは、1本の動画はおよそ3分~4分。長くても5分以内に収めています。おそらくアクセス解析などから現在の長さに落ち着いたのでしょう。
新規の視聴者すなわち、新しい支援者を獲得するためには短い動画の方が効果的ですが、従来の支援者向けの動画であれば、もう少し尺が長い方がよいでしょう。最適な長さは、およそ10分程度。この程度の時間があれば、問題をさまざまな観点から論じやすくなります。ボードなどに要点を簡単にまとめたり、動画に字幕を付けて解説をするようにすると、問題に詳しくない視聴者にとっても理解しやすい内容になるでしょう。
一番伝えたい内容を動画内で表現できているか
政治家が動画を配信するときにとくに意識しておきたいのが、自分が伝えたいメッセージをきちんと表現できているかどうかという点です。「有権者によいイメージを与えたい」や「好感度をアップしたい」などは、政治家が動画を配信する際に重要になる点です。ただ、こういった点に余りこだわりすぎると、肝心の自分のメッセージが伝わりにくくなることもあるので要注意です。
政策などのメッセージ性の強い動画は、派手な演出は必要ありません。フリップや字幕を使ってわかりやすさを心がけるよよいでしょう。
イメージアップ戦略として動画を使う場合は、カット割りやBGMなどを考慮したCMのような動画をつくるとよいでしょう。
動画を作成していくと、どうしても長くなってしまいがちです。動画の時間が長くなってしまう場合は、視聴者を飽きさせない工夫も大切です。
例えば立花孝志議員が公開している動画。「NHKから国民を守る党」を名乗るだけあって、NHK=敵という対立の構図を作り、訴訟問題などを取り上げ「敵と戦う」というわかりやすいスタンスを作っています。また、ホワイトボードを使った解説と、テンポのよい口調など長い動画でもユーザーを飽きさせない工夫が見られます。
政治家の動画の場合、政策や理念など曖昧な内容になりがちです。曖昧にならないようにするには、制作する前に伝えたい自身のメッセージをしっかりと整理ましょう。
さまざまなメッセージを伝えたいときは、いくつかの動画を作って別々に配信するのも1つの方法です。1つの動画に余り多くの内容を盛り込み過ぎると、メッセージのポイントがぶれることもあるので注意をしましょう。
動画を活用することによって、いままで政治に関心のなかった若い世代などへの露出が増えます。新しい層へも自身の考えや政策、実績などを伝えて、支持層をひろげていきましょう。