平成27年の安保関連法案を巡る賛否(3)

北朝鮮によるミサイル攻撃

日米安保等により日本海に展開している米艦船を、北朝鮮がミサイルで攻撃したとする。日本を防衛する目的なのだから自衛隊が個別自衛権の行使としてパトリオット等でミサイルを撃破することは反対されないだろう。
だが、撃破できない場合は多くの人命が失われることが容易に想像できるし、一発で済むとは限らないのだから、複数で反撃する必要がある。

この前提は日本を守っている米軍への攻撃があった場合である。それを集団的自衛権の行使とするのでは際限なく米軍につきあわされることになるのではないかという疑問が生じる。

日米は対等ではなく、従属しているのが我が国だとすれば断れないことになる。やはり法において一定の歯止めが必要である。
発射基地を探知できない場合があるし、すべてのミサイルを攻撃することはできないから、そのときにどうするか考えておかなければならない。北朝鮮が弾道ミサイルに小型化した核弾頭を搭載できると考えれば個別的自衛権の能力を高める必要がある。やはり憲法改正が必要といえる。抑止力を高めれば報復の連鎖になると危惧されているが、従前に戦闘とは明らかに変化している。一発の攻撃で致命的である存立危機事態になることは容易に想像できるのである。

海上交通路(シーレーン)の危機

海上交通路の危機というと、【1】海上交通路が封鎖された場合と【2】海上交通路に機雷が撒かれた場合が考えられる。

イランや自称イスラム国がホルムズ海峡を封鎖したら我が国の死活問題になり、我が国の存立を脅かすとしているが、他の海上交通路もあるのだから妥当ではない。イランの核開発問題は欧米など関係6か国が最終合意したようだから、当面の危機は発生しにくいと考えた方が妥当だろう。

産経ニュースでは「海上自衛隊は現在、停戦後の遺棄機雷であれば掃海できる。「警察権の行使」として危険物を除去していると解釈し、憲法9条が禁じる「武力の行使」に当たらないとしている」(参考:シーレーン封鎖に危機感 集団安保で機雷掃海なぜ必要 ホルムズ海峡での活動想定)。そうであれば停戦に至らない場合は武力の行使に当たるし、集団的自衛権の行使となって憲法に違反する。平和のための国際協力としては掃海を行う理由にはなる。

原発への攻撃

官邸屋上にドローンが落下しても気づかないくらいだから無人機が多数飛来し、原発の上空で爆弾を落とすことはSF映画のような作り話や荒唐無稽として無視してはならない。

一度でも実際に攻撃されれば放射能が広範囲に撒き散らされることは想定しておかなければならない。周辺住民は緊急避難しなければならなくなる。アラートで知らせても手遅れになるかもしれないし、被害は甚大になる。

核廃棄物の最終処分をどうするのか答えられず、福島第一原発事故の事故処理も長期にわたるのだから、再稼働は期限を厳守して脱原発方針を明確に打ち出すべきで、それは安全保障の危機管理上も必要だと思う。

おわりに

台風11号が日本列島に迫る中、衆議院で安全保障関連法制が与党だけの賛成多数により強行採決された。
国会内では民主党が反対を連呼し、国会外では国民の一部が反対のデモをしていた。そして、衆議院優位の中で参議院に送られた。

参議院が良識の府だと言われていても、60日ルールで衆議院の議決が優先されるのだから、衆議院の結論の変更はないことになる。
しかし、報道機関の調査によると国民の多数が反対している。低投票率の中で得た政権は世論の過半数を得ているか疑わしいのである。

安全保障関連法案に対する批判は無視してはならないし、法案成立後に司法判断を仰ぐ人々によって違憲審査を受けることになるだろう。
地方裁判所が違憲としても跳躍上告で最高裁判所が忖度して高度な政治判断だとして地方裁判所の違憲判決を否定するかもしれない。

政府は憲法改正が必要なのに、硬性憲法のために安全保障関連法案を成立させようとあくせくしてきたが遠回りではないか。
私は集団的自衛権の行使については賛成してきた。日米安保条約の履行で米国の若者が命の危険を感じながら我が国の防衛に協力しているのに、我が国は守れないからお金だけ出すのでは情けないと思うからだ。友好国として彼らを助けるのは当然のことである。

しかし、そのためには憲法改正が必要である。その議論なしにまやかしで国民を危険に晒し続けてはいけない。たとえ反対者が多くても説明責任を果たして賛同者を増やせばいいと思う。(了)

山川啓介

山川啓介

50代前半、独身、男。徳島県阿南市で小さな飲食店を経営し、自治体の委員や専門学校の非常勤講師をしている。安全保障やエネルギー、原発政策などに強い関心をもつ。