楽天の民泊事業進出のしたたかな戦略

去る6月に民泊新法が成立し、宿泊施設に対する規制が大幅に緩和されることになりました。それを契機に民泊事業に乗り出す企業が相次いでいますが、インターネット会社の楽天の動きが注目を集めています。というのも、単なる民泊事業にとどまらず、ネットを活用したさまざまな民泊関連事業に食指を動かしているからです。

オンライン旅行予約、宿坊施設の管理運用、クラウドファンディングなどの金融支援など、事業分野は広がる一方です。民泊関連事業に見る楽天のしたたかな戦略を探っていきます。

民泊事業への参入企業が相次ぐ

民泊新法が成立・施行されたことを受け、民泊事業を本格的に展開する企業が目立っています。セキュリティ大手のALSOK、不動産フランチャイズ事業を手掛けるハウスドゥ、大東建設不動産、さらには京王電鉄やパナソニックまでが、事業実施を準備しています。こうした民泊事業は、宿泊施設や関連情報のサービスの提供が主なものです。

楽天の場合は、民泊新法の成立を見越し、かなり早い段階から事業の準備を進めていたようです。楽天は、インターネット事業を展開する企業として、さまざまな店舗、旅行、不動産をECマーケットとして取り込み、事業展開しています。この中には、もちろんホテル等の宿泊施設もありますが、これらは従来の旅館業法に基づく宿泊施設です。

今回の民泊新法は、旅館業法などによる規制を大幅に緩和し、インバウンド(外国人旅行客)などに手軽に宿泊施設を提供することに目的があります。そのため、新法による宿泊施設は大幅に増える見通しで、楽天としてはこうした状況に対応する必要に迫られていました。

楽天LIFULL STAYを軸に民泊事業を展開

楽天は、2017年6月に不動産ネットワーク会社のLIFULLと共同で新会社「楽天LIFULL STAY」を設立し、民泊事業に参入しました。新会社は民泊新法に基づき、住宅宿泊仲介事業者として観光庁長官の登録を受けた上、インターネットを通じた民泊プラットフォーム事業を展開します。民泊プラットフォーム事業というのは、民泊施設を提供したい人と施設を利用したい人とをインターネットを通じて結びつける事業です。

このプラットフォームは、「宿泊提供サービス:Vacation Stay」の名称で、空き家や空き部屋などの遊休資産の所有者には資産活用の新たな機会を、旅行客を含めた消費者には宿泊施設の幅広い選択肢をそれぞれ提供します。

楽天はネットワークを通じたさまざまサービスの提供を通じて、現在9000万人に上る会員を保有しています。さらに、全国の地方自治体ともネットワークを築いています。一方LIFULLは、約800万件を掲載する不動産・住宅情報サイトを運営し、約2万2000を超える不動産加盟店ネットワークを持っています。こうした不動産加盟店ネットワークと、楽天の保有する顧客基盤を結びつけることで、民泊市場での優位なシェアを確保することを狙っています。

世界的なオンライン予約サイトと提携

楽天は、民泊事業拡充のため、世界的なオンライン旅行予約プラットフォーム「Agoda」社(シンガポール)と提携し、「Vacation Stay」に掲載する日本国内の民泊施設や簡易宿泊施設の情報を「Agoda」に提供します。それによって、インバウンドが楽天の民泊施設に宿泊する割合が飛躍的に高まることが予想されます。

「楽天LIFULL STAY」は、宿坊ポータルサイトや宿坊予約サイト「テラハク」を運営する和空(大阪市)と業務提携し、国内の一般客やインバウンドなどに、宿坊施設の予約や、宿坊情報の提供などを実施することにしています。従来、宿坊は、主に、僧侶や神職、参拝者のための宿泊施設でしたが、近年、一般客の宿泊にも利用が広がっています。楽天は、インバウンドにも、日本らしさを体験してもらおうと、和空と提携し、宿坊の利用を広げることになったのです。当面、滋賀県の三井寺境内にある僧坊「妙厳院(みょうごんいん)」を改修、整備し、「宿坊施設・和空三井寺」として予約受付を始めることにしています。

クラウドファンディングなどの金融支援も

楽天では、民泊施設運営にはリニューアルや物件購入などのために、資金調達やファイナンスが必要であると判断、そうした事業のために金融・投資会社の「SAMURAI&JPARTNERS」(東京・港区)と提携し、宿泊施設の開発・供給に伴うクラウドファンディング(ネットによる不特定多数からの資金調達)などのファイナンス支援を行う方針です。

楽天の民泊事業に伴うこうしたさまざまな事業展開は、民泊事業がインターネット事業に極めてなじみやすいという判断に加えて、これまでのインターネット事業で構築した顧客基盤を活用できるとの思惑があるためです。楽天の強みは、ネットを活用した複合・多角的な事業展開が可能であるという点です。民泊事業への多くの参入企業が、今後こうしたネット活用による複合的な事業を展開すると予想されますが、楽天はその前にネット利用の先行組としてのシェアを一気に広げようという、民泊事業参入へのしたたかな戦略があるといえます。

記載例つき 民泊ビジネス運営のための住宅宿泊事業法と旅館業法のしくみと手続き (事業者必携)

政くらべ編集部

政くらべ編集部

2013年に政治家・政党の比較・情報サイト「政くらべ」を開設。現職の国会議員・都道府県知事全員の情報を掲載し、地方議員も合わせて、1000名を超える議員情報を掲載している。選挙時には各政党の公約をわかりやすくまとめるなど、ユーザーが政治や選挙を身近に感じられるようなコンテンツを制作している。編集部発信のコラムでは、政治によって変化する各種制度などを調査し、わかりにくい届け出や手続きの方法などを解説している。