書評

「21世紀型貧困層」を救う手段

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

橋本健二(講談社)

「本書は基本的に、現代日本では格差は容認できないほど大きくなっており、格差を縮小させ、より平等な社会を実現することが必要だという認識に立っている」と著者は主張しています。現代日本は格差社会を通り越して階級社会であるとし、様々なデータを使って階級社会の分析・解説が施されています(図表の数は実に57)。

かつて「一億総中流」と謳われた日本の社会構造は1980年頃から40年近くかけて崩壊。それは古くから階級社会の基本として論じられてきた「資本家が労働者から搾取する」といった単純な図式ではなく、パート・アルバイト・派遣社員などの非正規社員を中心とした下層階級(アンダークラス)の増大によって、労働者の間で大きな格差ができ、「中流」は完全に分解され、アンダークラスは「階級以下の存在」となり、その貧困は子どもにも連鎖、階級は固定化するという実情を著者はつまびらかにしています。

経済格差が拡大することによる弊害として挙げられているのが、貧困層の人々は生存権を保障されないばかりか、結婚して家族を形成する機会すら得られなくなるという倫理的に看過できない問題。そして社会的コストの増大。貧困層が健康を害しやすく、十分な医療を受けられないだけではなく、実は貧困層以外の人々の寿命も引き下げられてしまうとのことです。

経済格差が大きいと、多くの人々は公共心や連帯感を失い、友情は形成されにくくなり、コミュニティへの参加も減少するため、犯罪の増加・精神的ストレスが高まることから平均寿命は引き下げられます。人々の健康状態は、平等な社会ほど良いらしいのです。無論、貧困層が増えれば社会保障支出も増大して、国にとって痛手です。

そして最も問題と思われるのが、前述したように、貧困層の子どもが貧困層になりやすい「貧困連鎖」によって格差が固定し、一部の子どもたちが教育を受ける機会を奪われるという点で、人権上の問題があります。それは社会にとっても損失であり、適切な教育さえ受ければ花開いたはずの多くの才能が、貧困のために埋もれていく莫大な人的資源の損失です。

著者が考える格差縮小の手段は、「均等待遇の実現」や「最低賃金の引き上げ」、「労働時間短縮に伴うワークシェアリング」などによる賃金格差の縮小。「累進課税」や「資産税導入」などによる所得の再分配。そして「相続税率の引き上げ」や「教育機会の平等の確保」による、格差を生む原因の解消です。

とはいえ、比較的富裕な人々の多くが貧困層に対して冷淡な視線を送っているというデータを考えると、アンダークラスの人々の政治への関心の低さや投票率の低さの問題をいかに解消すべきか、が困難とはいえ重要な課題と言えるでしょう。

新・日本の階級社会 (講談社現代新書)

前田健作

前田健作

40代男性。茨城県在住。ライター・フォトグラファー。ライターとしては小説アプリにて多数執筆。フォトグラファーとしては「パック」という名前で活動中。日本はもちろん諸外国の政治体制や政治指導者への関心を持って生活しています。