書評

隗より始めよ

国会女子の忖度日記: 議員秘書は、今日もイバラの道をゆく(徳間書店)

神澤志万(徳間書店)

たとえば中国古典の『老子』や、16世紀のイタリアでマキャベリが著した『君主論』によれば、いわゆる政治指導者は、絶対に侮られてはならない、侮られたら政治家として最悪である…と書かれています。

今回紹介する『国会女子の忖度日記』にて、女性として国会議員の政策秘書を20年以上勤めている著者は、基本的に我が国の国会議員を侮っています。

確かに現今の、政治家の実力不足や、毎度続く不祥事により、国民が政治家を侮るというのなら話は分かります。

しかし現役の、国会議員の政策秘書が、いわゆる「ボス」の議員や他の国会議員などを軽蔑のまなざしで見つめ、彼ら彼女らの言動を書籍にてぶちまける、とはどういうことでしょうか。

結局は、政界は「国民の鏡」などではなく「社会の縮図」であり、著者いわく「ブラック企業もびっくりの超真っ黒けの職場」である、とのことで、一部例外を除き、侮蔑の対象であり尊敬に値しないということでしょう。

2017年は、当時衆議院議員の女性が、秘書に対する暴言を浴びせて暴行を働いた模様を録音したものがニュースで何度も流れ、問題になりました。

著者によれば、それに近いことは議員の秘書としては日常茶飯事とのこと。

怒鳴りちらす議員、超過密・超長時間労働、強烈な男尊女卑世界、セクハラやパワハラの横行(それはむしろ良いほうで、人間扱いしてくれない職場もあるとか)、お茶に唾を吐いて「これを飲んだら票をやる」と言う支援者、そんな理不尽な職場では秘書の中でも同僚間の陰湿なイジメが横行。

あげくの果てには、たとえ秘書が国会内の階段で転倒して骨折をしてもなかなか救急車を呼べないシステム、選挙をする度に必ずスタッフにストレス過多で死人が出る元大臣、などなど…。

このような救いのない話が続いても興味深く読み進められるのは、ベテラン秘書である著者の一種の諦念を含んだ軽妙な語り口ゆえでしょう。

そして「忖度」という言葉が人口に膾炙した2017年、ボスである議員を立てて意向を忖度できる秘書こそ、ボスにとって「有能な秘書」である、という結論に至るのです。程度の差こそあれ、どこの組織もそうではありますが、政界の闇は深そうです。

「働きかた改革」、「女性活躍推進」を成功させようとする政府も、まずは自身の足下から…隗より始めよ、という言葉を贈りたくなります。

国会女子の忖度日記: 議員秘書は、今日もイバラの道をゆく(徳間書店)

前田健作

前田健作

40代男性。茨城県在住。ライター・フォトグラファー。ライターとしては小説アプリにて多数執筆。フォトグラファーとしては「パック」という名前で活動中。日本はもちろん諸外国の政治体制や政治指導者への関心を持って生活しています。