書評

新しい時代には新しい経済政策を

経団連と増税政治家が壊す本当は世界一の日本経済 (講談社+α新書)

上念司(講談社+α新書)

昭和末期から平成初頭にかけてのバブル崩壊後、復調の兆しが現れはじめた日本経済を腰砕けにしてしまったといわれる1998年の消費税増税、緊縮財政。結果的にデフレはより深刻になり、新しい発想を持った新興ベンチャー企業が世に出る機会が大きく失われてしまったという著者の論が、本書ではあらゆるデータ分析によって展開されます。

アベノミクス効果が本格的に芽を出してきたと思われる今に至っても、与野党に多数存在する、日本の財政健全化を旗印に掲げる「増税政治家」や経団連(日本経済団体連合会)に所属する大企業。殊に新しい発想や技術革新がない、もしくは活用できない多数の大企業にとっては、自社を脅かすような新興ベンチャー企業との競争を嫌う古い体質が依然残っており、デフレを容認さえする考えが蔓延しています。

大企業が本来、株主や従業員に流すべき莫大な資産を内部留保としてため込むのは、アベノミクスが突如終了して再びデフレが訪れた時の備え。自らの既得権を死守するためには消費税増税や、そこから派生するデフレをも歓迎する姿勢があると著者は主張します。

多くの政治家も、財政再建などの見地から消費税増税はやむなし、という意見を持ってしまっているようですが、国債(国の借金)と同じくらいの資産を日本は保有している事実は財務省や大手マスコミは国民に知らせていない、とのことです。少なくとも財政危機ではないようです。

まず、政治家・官僚・大企業経営者・もちろん我々一般国民も、「借金はすべて悪だ」という概念を捨てるべきでしょう。適切な借金によって将来的に大きなリターンがあれば、下手な増税よりも長期的観点からは大きなプラスです。

たとえば「こども保険」なる現役世代に負担をかける政策を行おうという議員もいます。しかし「教育国債」を発行して、国家有用の人材を多く育てて、国債償還は恩恵を受けた世代がすれば良いという主張もあります。それは、農業・国防・イノベーションなどの分野でも同様です。

日本のイノベーションを支えているベンチャー企業の成長を妨げる「増税政治家」と経団連。既存の大企業には潤沢な補助金その他が惜しみなく与えられますが、効果のほどは知れません。それにしても、国からの補助金などはほぼもらえないベンチャー系外食産業が花開き、特に和食が世界のトップクラスに位置づけられるまでに至ったのは皮肉な話です。

政治家も経団連も、本当に日本経済活性を進める心づもりならば、古いフォーマットの上に胡座をかかず、ビジョンに富んだ金融・財政政策を真摯に追求してほしいと思います。

経団連と増税政治家が壊す本当は世界一の日本経済 (講談社+α新書)

前田健作

前田健作

40代男性。茨城県在住。ライター・フォトグラファー。ライターとしては小説アプリにて多数執筆。フォトグラファーとしては「パック」という名前で活動中。日本はもちろん諸外国の政治体制や政治指導者への関心を持って生活しています。