書評

過去から学び、現在に通用する政治家を多く望む

自民党秘史 過ぎ去りし政治家の面影 (講談社現代新書)

岡崎守恭(講談社現代新書)

「政治にとって一番、危険なのは『飽き』と、そこからくる『無視』である。『政策』が大事という。その通りである。が、政治の基本は『人』である」と著者が述べるとおり、本書は具体的な政策よりも政治家、とりわけ一昔前の自民党国会議員の人となりがテーマになっています。

かつて派閥の力がものをいった時代の党内における権謀術数。そこから浮かび上がる大物政治家やバイプレーヤー政治家の温かさや冷たさ・優しさと怖さを、当時、日本経済新聞政治部記者だった著者の視点で回顧されます。

政治家のみならず、政治家夫人や政治記者生活の裏話も大変興味深い内容になっています。その中で、政治部担当になった当時の著者は、先輩記者からこう言われます。「明日から国会に行ってもらうが、曲がりなりにも最高学府を出た君より頭がいいと言うか、まっとうな議員は10人もいないだろう」と。そんなことはいくら何でもないのでは、と怪訝な顔をする著者に先輩は続けます。「ただしただ、いまここで五億円のカネをもらったとしても、次の選挙までに後楽園球場いっぱいの五万人に君の名前を書かせることができるか」「(そう考えると国会議員は)本当はどこかすごいところがあるはずだと思わざるを得ない」と。

頭がいいか、まっとうか、という問題はさておき、良きにつけ悪しきにつけ曲者ぞろいだった昭和から平成初頭までの自民党議員。2世・3世、高学歴が当たり前の現在の議員と比べると、あんまりな無茶を通したり乱暴な言動が多い前時代の叩き上げの政治家たち。今では通用しないだろうな、というエピソードが多々ある中、短命政権に終わった宇野宗佑元首相の意外な多芸多才と芯の強さには感心し、失言・暴言などによる支持率低迷に泣いた森喜朗元首相の一般的イメージからは程遠い気配りの細やかさや優しさは読むだけで胸が落ち着きます。

小選挙区の導入などにより、党の公認が得られないと新人の当選が難しい現在の情勢では、良くも悪くもクセのある政治家がいなくなるのは仕方ありません。

しかし、曲者ぞろいだった過去の政治家の発想力・行動力など、良い面を取り入れる姿勢は大切だと思います。もちろん悪しき面を受け継ぐ必要はありません。それらのプロセスの中から自身の政治家としての「色」を濃く出してほしい、と強く望みたいです。

自民党秘史 過ぎ去りし政治家の面影 (講談社現代新書)

前田健作

前田健作

40代男性。茨城県在住。ライター・フォトグラファー。ライターとしては小説アプリにて多数執筆。フォトグラファーとしては「パック」という名前で活動中。日本はもちろん諸外国の政治体制や政治指導者への関心を持って生活しています。