書評

主権者としての責任、覚悟

「18歳選挙権」で社会はどう変わるか (集英社新書)

林大介(集英社新書)

日本において、1980年代から90年代初頭までのバブル経済に浮かれた世相の中、若者は政治への関心を急速に失っていきました。21世紀に入り20年近く経過した今でも、若者が友人などに政治や社会問題について話すと、「意識高い系」といったレッテルを貼られて変わり者扱いを受ける、という状況がまだ少なからずあるようです。

若い世代では、政治に興味を持ち選挙に行ったところで何が変わるのか、たかが1票では何の影響も及ぼさない、といった主張が未だに大きな勢力を維持しています。しかし、2014年の総選挙では、小選挙区において接戦が目立ち、新潟2区では「当落の差」において102票。「たかが1票」などとは言えない、と著者は主張します。

単なる票の多寡の問題にとどまらず、2015年にNHKが実施した18歳、19歳の若者3千人を対象にした世論調査によると、「あなたは、いまの政治が変わってほしいと思いますか」という問いには「変わってほしい(大きく変わってほしい+ある程度変わってほしい)」は87.3%です。若者の多くは、実はいまの政治に変わってほしいと思っているのです。

この一見矛盾した現象をどう見るか。著者は、「現実の政治から逃げる教育現場、扱うことを批判する政治家」が問題である、と喝破します。

教育の政治的中立性への懸念からか、生の政治を子どもから取り上げる教育委員会。そして、某県立高校が、実際の政治課題について3時間の議論を経て、高校生が賛否を投じるという実践に対し、この授業の取材記事を読んだだけの県議会議員が県議会で「政治的中立性が問われる現場にふさわしいものか、疑問を感じる」と、学校現場の取り組みを萎縮させる発言など。

これは、たとえ政治を真剣に考えようとする子どもたちがいても、その若い芽を大人が摘むようなもので、「教育は国の根幹」といっても、その教育現場が成熟していなければ健全な民主主義も成熟しないのではないでしょうか。

ともあれ、著者は、若者に対して「選挙のときだけ考えればいいわけではない。日ごろから選挙のみならず社会に目を向けて、その時々の課題について把握し、自分で考えたり、友だちや保護者などと議論したりすることが大事である」「有権者となる前から試行錯誤をしつつ考えることが大事なのである」と述べています。

「動かなければ何も変わらない、動かなければ現状容認であり、前進しないために、むしろ後退することになる」という論は、若者のみならず大人にもそのまま当てはまるかと思います。今一度、主権者としての責任を考えてみることも大切と感じます。

「18歳選挙権」で社会はどう変わるか (集英社新書)

前田健作

前田健作

40代男性。茨城県在住。ライター・フォトグラファー。ライターとしては小説アプリにて多数執筆。フォトグラファーとしては「パック」という名前で活動中。日本はもちろん諸外国の政治体制や政治指導者への関心を持って生活しています。