告示まで1カ月切った衆院トリプル補選、政権運営の試金石に

内閣改造後初の国政選挙となる衆院青森4区、新潟5区、愛媛3区の補欠選挙は、10月10日の告示まで1カ月を切りました。
いずれも自民党議員の死去に伴う選挙とあって、支持率低下に苦しむ安倍晋三首相は全勝で政権の再浮揚を目指しています。

野党の民進党は前原誠司代表の初陣だけに一角を切り崩したいところですが、山尾志桜里元政調会長の離党で出鼻をくじかれ、野党候補の一本化にも不透明感が漂っています。投開票は10月22日です。

青森4区で自民党は木村太郎氏の実弟を擁立

自民党は木村太郎元首相補佐官の死去に伴う青森4区で、太郎氏の弟で元青森県職員の木村次郎氏(49)を擁立します。

次郎氏は青森県藤崎町の出身。中央大を卒業後、青森県職員となり、交通政策課副参事や地域活力振興課課長代理などを務めました。第4選挙区支部長・幹事長会議で出馬表明しましたが、兄の遺志を継ぐ弔い合戦を掲げて支持を広げる構えです。

弘前市を中心とする津軽地方の青森4区は、衆院議員から知事になった父の守男氏、元衆院議員で北海道開発政務次官を務めた祖父文男氏と3代続く木村家の地盤。これをフルに生かして議席維持を狙っているわけですが、2016年の参院選では野党統一候補が大票田の弘前市で自民候補の得票を上回り、勝利しました。

このため、4区以外が地盤の国会議員、県議も動員し、組織固めに全力を挙げています。

これに対し、民進党は元県議で県連幹事長の山内崇氏(62)が挑みます。山内氏は参院選同様、野党協力に活路を見いだしたい考えですが、前原代表の意向はまだ不透明で、野党共闘が実現するかどうかは予断を許しません。

共産党は野党共闘が実現しない場合、新人の高柳博明氏(47)の擁立に動くとみられます。

新潟5区は前知事の擁立めぐり県連内に混乱

長島忠美衆院議員の死去に伴う新潟5区で、自民党は前新潟県知事の泉田裕彦氏(54)を擁立する方向です。

泉田氏は新潟4区の新潟県加茂市出身。京都大を卒業後、経済産業省を経て2004年の新潟県知事選挙で初当選、知事を3期12年務めました。知事の経験から5区内でも知名度が高く、勝てる候補として白羽の矢が立ち、本人も出馬要請を受け入れる考えを明らかにしています。

しかし、知事時代に東京電力柏崎刈羽原発の再稼働に慎重だったことなどから、自民党新潟県連内に反発の声が出ています。地元支部の選考委員会では、複数の県議が補選出馬の意向を示し、泉田氏正式擁立の結論が持ち越されました。候補一本化に向け、さらに協議が続く見通しです。

これに対し、民進党は社民、自由の両党、連合新潟と候補者擁立で合意していますが、共産党は新人の西沢博氏(37)が立候補を表明しています。

野党候補の一本化についてははっきりせず、民進党内に旧民主党政権で文部科学相を務めた田中真紀子氏(73)ら知名度の高い候補者を模索する動きも出ています。

愛媛3区は麻生副総理主導で白石徹氏の次男を公認

白石徹衆院議員の死去に伴う愛媛3区で、自民党は徹氏の次男白石寛樹氏(29)を公認しました。寛樹氏は新居浜工業高校から国士舘大へ進み、父の徹氏が県議から衆院議員に転身すると秘書となりました。

徹氏が麻生派に属していたことから、麻生太郎副総理が早くから後継擁立に動き、4月に開かれた徹氏をしのぶ会で寛樹氏を後継者にしたい考えを明らかにしました。

自民党愛媛県連には愛媛選挙区選出の参院議員を推す声もありましたが、公募に応じたのは寛樹氏だけ。麻生副総理はその後もたびたび現地入りし、寛樹氏後継で地元をまとめ上げたとみられています。

ただ、寛樹氏の女性問題が雑誌で報じられたことから、危機感を持つ声も上がっています。

民進党は元職の白石洋一氏(54)を担ぎます。洋一氏は2009年の衆院選で約10万票を集め、初当選しましたが、その後2回の選挙で徹氏に敗れました。共産党は新人の国田睦氏(65)の擁立を発表していますが、野党統一候補の擁立も模索しています。

選挙結果は安倍首相の衆院解散戦略に影響

3選挙区での補選が同時に行われるのは2004年以来。今回は森友・加計問題で支持率を下げ、東京都議選で大敗を喫した安倍政権の信任投票の色合いが強くなりそうです。

内閣支持率は直近の報道各社世論調査である程度持ち直していますが、森友・加計問題以前の勢いはありません。自民党が保持していた議席ばかりだけに、安倍首相にとっては1つも落とせない戦いになります。

選挙結果は今後の衆院解散戦略を左右するだけでなく、自民党総裁3選の行方にも大きな影響を与えそうです。民進党にとっても前原代表の初陣として党勢拡大のきっかけにしたいところです。

しかし、前原代表が共産党との野党共闘に慎重姿勢を示し、統一候補の擁立が実現するかどうか見えてきません。

山尾元政調会長の離党で党内の混乱と世論の反発に直面し、イメージダウンの払しょくにも苦心しています。与野党とも苦しい事情を抱えたままの選挙戦になりそうです。

高田泰

高田泰

50代男。徳島県在住。地方紙記者、編集委員を経て現在、フリーライター。ウェブニュースサイトで連載記事を執筆中。地方自治や地方創生に関心あり。