一歩踏み出して、中身のある経済論争を

安倍首相による消費増税延期の発表によって、にわかに経済政策の論議が沸騰してきました。しかし、与党の戦略性の高さと野党の迷走によって、いまいちその論議は深まりを見せていません。
野党は与党にどう対抗するべきなのか、どう対応すれば議論が深まるのかを本稿にまとめました。

急展開と野党の混沌

安倍首相の消費増税時期の2年半延期が発表され、現下では最大の国政課題として消費増税の可否が議論されています。
なぜ2年半の延期に決めたかを推測すれば、その年に行われる参議院選挙の後であること、その参議院選挙では駆け込み需要による景気浮揚を訴えることができること、の二つが主に挙げられます。

自民党と公明党はもちろん従前の主張から一転してこの増税延期を受け入れ、野党では民進・共産・社民・生活の4党がアベノミクスの失敗を認めろと迫るなど、政局は(たとえ予想通りではあっても)急展開を迎えました。
ただ、野党が消費税について一致団結しているかと言えばそうではありません。共産党は消費税率引き上げの断念、おおさか維新と生活の党は消費増税凍結、日本のこころを大切にする党は消費税率5%への引き下げ、社民党は消費税制度の廃止と、各党がさまざまな主張を繰り広げています。

とりわけ民進党では、党内で増税推進から増税延期、そして税率5%引き下げまで意見がバラバラになっており、安倍首相の増税延期発表後の対応については未だに定まっていません。それ故に、アベノミクスの失敗を主張することで党内の意見をまとめる時間稼ぎを、そして各党の主張の差を越えて選挙協力ができる環境作りをしているようにも見えます。

条件闘争のすすめ

ただ筆者は、野党にはもう少し工夫を加えた戦いをしてほしいと考えています。断念や凍結、引き下げでは財政規律を安易に扱いすぎ、増税推進ではデフレ脱却が絶望的になり、2年~2年半の延期に同調ではその時の経済状況に不安を覚えることになります。
ではどうすれば良いのかというと、野党には条件闘争で戦ってほしいのです。

例えば景気弾力条項の復活。もともと前回の衆議院選挙では、与党が三党合意で付された「景気弾力条項」の削除と増税時期の延期を訴えて仕掛けたものです。
景気弾力条項とは、野田政権当時の消費増税を決めた法律の附則にあった「経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から…経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」(社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律 附則第18条3より抜粋)という条項です。

今回再度の増税延期を発表した政府は、景気弾力条項の削除によって、伊勢志摩サミットの大舞台で「リーマンショック並みの危機」を唱えなければならなくなったのです。
この景気弾力条項には数値要件がありませんでしたが、「名目GDP600兆円を達成するまで」などと具体的な目標を付けた景気弾力条項の復活を主張すれば、安倍首相の提示した「2年半」という時間で区切った増税延期に立派に対抗できるのではないでしょうか。

単純に消費増税の凍結や断念、推進などを主張するよりも、少し複雑ではあっても現実的かつダメージの少ない方法を提示していくのが、政治を深化させることに繋がるのではないかと思っています。

アベノミクスは失敗か

また、民進・共産・社民・生活のいう「アベノミクスは失敗」に関しても、やや中身が薄いと感じています。
アベノミクス三本の矢とは①大胆な金融政策②機動的な財政政策③民間投資を喚起する成長戦略—ですが、振り返ると①の金融政策は実行され効果を上げているものの、②の財政政策は消費増税で逆行し、③の成長戦略については特に印象的な政策は打たれていません。つまり筆者は、アベノミクスは未だ実行されていないor途上中とみており、これを失敗や破綻といった言葉で片付けるのは表面的すぎると思っています。

野党各党とも独自の政策を持っているにも関わらず与党の失策をクローズアップして選挙を戦うならば、短期的には野党共闘の役に立っても長期的には政策論議が深まらずに、延々と一党優位政党制が続くだけではないでしょうか。

政治を育てる、国民の努力

もっと政治に興味を持ってもらい、よりよい政治環境を後世に伝えるために、多少複雑でも中身のある政策論争に少しずつ国民を引き込んでいく努力が現代の政治にとって必要なのではないでしょうか。

もちろん我々国民も、ただ単に「選挙に行こう!」「デモで叫ぼう!」というだけに終わってはいけません。しっかり各党の政策をチェックしてそれぞれの実効性を吟味していくという地道で中身のある努力があってこそ、政治家はそれに応え、より充実した議論を国民に向けることができます。

選挙を前に、なぜ消費増税が必要なのか、なぜデフレ脱却に増税延期が必要なのか、そしてアベノミクスとは何でどんな成果があったのか、普段から政治に関心のある人もない人も一度復習してみてはいかがでしょうか。そのちょっとした国民の手間と努力が、やがて政治環境を充実させていくのではないかと思っています。

浅枝ゆう

浅枝ゆう

24歳男、東京都在住、現在転職活動中。大学在学中から政治全般に興味を持ち、ツイッターでは与野党関係なく国会議員や地方議員をフォローしている。

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